研究課題/領域番号 |
19K03043
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
工藤 憲昌 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40270194)
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研究分担者 |
釜谷 博行 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (70224657)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 計測工学 / 補聴器 / ハウリングキャンセラ / 教育工学 |
研究実績の概要 |
補聴器で用いるハウリングキャンセラ用適応フィルタでは,適応動作の入力となる信号と,補聴器自体の入力である外部入力とが強い相関があるため,適応フィルタの推定値が真値に収束しないことが多い.このため,適応動作の入力信号,適応動作の誤差信号の両方を疑似白色化して適応動作を行う方法を検討した.更に,補聴器のこの方法による適応フィルタでは,音楽や音声のように振幅が大きい周波数の配置が時変で偏在している場合に,入力信号の疑似白色化が十分に行うことができないこと,収束速度が十分ではないこと,等の問題がある.このため,以下のような計画で研究を進めた. 1) 周波数配置が時変で偏在している場合の問題については,適応動作の入力の周波数分布をできる限り変化させないよう白色化するために用いるフィルタとしてIIR型ノッチフィルタを採用することで対処することとし,シミュレーションにより確認した. 2)収束速度の問題については,学習の適応ループ内にリーク付き積分器を導入することで,効果があることをシミュレーションにより確認した. 3) 上記1),2)の動作をグラフィカルなユーザ・インターネース(GUI)から設定できるよう検討した. また,開発プラットフォーム上のアルゴリズムの選択肢を広げるため,上記の方法の他に,相関信号を用いた方法(エコーキャンセラに対して開発された方法)についても先行研究の調査を行い,ハウリングキャンセラでもほぼ妥当な性能を持つよう改良を重ねてきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で記載したように,以下のような計画で検討を進めた. 1) 周波数配置が時変で偏在している場合の問題については,入力信号の周波数分布をできる限り変化させないよう疑似白色化するために用いるフィルタとしてIIR型ノッチフィルタを採用した.疑似白色化の際に,他の帯域の特性を変化させないこと,および除去する信号の帯域幅を制御できることを確認した.2)収束速度の問題については,学習の適応ループ内にリーク付き積分器を導入することで,収束速度の向上に効果があることを確認した. 3) 一部,先行して上記1),2)の動作をグラフィカルなユーザ・インターネース(GUI)から設定できるよう検討した. また,上記の入力信号の擬似白色化に基づく方法の他に,相関信号を用いた方法(エコーキャンセラに対して開発された方法)についても先行研究の調査を行い,ハウリングキャンセラでもほぼ妥当な性能を持つよう検討を重ねてきた. 3Dプリンタを用い実環境に近い三次元の外耳道の実モデルを造形するプロトタイプについては,周波数特性を可変にできるフィルタを使ったシステムで代替することで遅れが生じてしまった.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに検討した上記1),2)の方法の改良,相関法を用い演算量を削減したカルマンフィルタの基づく補聴器用の方法等についてシミュレーションにより比較・検討し,今後実時間処理について実装を進める. また,3Dプリンタによる実環境に近い三次元の外耳道の実モデルのプロトタイプについては,周波数特性を可変にできるフィルタを使ったシステムで代替する検討を行った. 以降,検討した方法やプラットフォームを継続して改良すると共に,一部先行して開発しているグラフィカルなユーザ・インターフェース(GUI),機能(方法)が容易に付加・削除できること,機能の効果やパラメータの変更の効果が容易に可視化できること,等の改良を行って実験用教育システムを構成する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に三次元の外耳道の実モデルを造形した開発用プラットフォームのプロトタイプの検討が難航し必要な部品等の外部環境を選定できず,周波数特性を可変にできるフィルタシステムで代替するように方針を変更したこと,新型コロナウィルスの関係で,いくつかの学会の出張旅費をキャンセルせざるを得なかったこと,或いは,オンライン参加になったことが主な理由である. 3Dプリンタを用い実環境に近い三次元の外耳道の実モデルを用いた開発用プラットフォームのプロトタイプについては,周波数特性を可変にできるフィルタを使ったシステムで代替する検討を行った.これに伴い実時間システムの性能向上に使用することに用途変更すること,また,成果を学会発表して計画との整合を図る.
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