研究課題/領域番号 |
19K03055
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研究機関 | 兵庫教育大学 |
研究代表者 |
小川 修史 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (90508459)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発達障害 / ICF / アプリケーション |
研究実績の概要 |
本研究では合理的配慮を検討している発達障害児の教師や支援者(以下,ユーザとする)を対象に,アプリケーション活用の事前検討を促すことを志向したシステム「アプリ@コンシェルジュ」の構築を目指している。本システムは事前検討すべき内容について,システムとの対話を通してユーザに検討させる「検討フェーズ」と,事前検討の結果に基づき最適なアプリおよびアプリを用いた指導事例を推薦する「推薦フェーズ」により構成される。つまり,ユーザがアプリケーションを検索する過程で事前検討を実施させることが可能になる。 システムの構築にあたり,検討フェーズにおいては,ユーザとシステム間の対話を実現するための体系化された知識が必要と考えた。申請者はこれを「Pre-AIM(Prior Examination Application Introduction Model)」と定義し,初年度はPre-AIMの構築指針について検討した。 まず,世界保健機構(WHO)が2001年に示した国際機能分類(ICF)に着目し,アプリ導入の目的をICFにおける活動または参加の実現に焦点化し,事前検討の際に使用する概念の体系化を試みた。ICFにおける活動または参加の実現を前提とした事前検討を促すという観点では,発達障害児固有の困難さを障害特性から捉えるのではなく,活動・参加の観点から捉える必要があるといえよう。そこで,筆者らは[活動/参加]から[心身機能・身体構造][環境因子][個人因子]を踏まえて困難さを導出する過程について,オントロジー工学的アプローチから定義を試みた。具体的には,ICFで定義されている分類/コードを専門家の合意として捉え,ICFを構成する各要素について。アプリ活用の事前検討の観点で概念の体系化を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では初年度の前半で「アプリの収集とアプリ導入の観点でICFの分析を実施」,「初年度の後半で事前検討事例の収集・分析,およびPre-AIMの試作」を実施する予定であった。現段階で,アプリの収集・導入に関する実践事例データの収集は実施済みである。収集したデータについて,ICFの観点から分析を実施した結果,「活動・参加」の観点について概念体系を整理した上で,環境因子との関係性について記述する必要性が示唆された。そこで,オントロジー工学的アプローチから概念体系の構築を実施した。ICFにおける活動または参加の実現を前提とした事前検討を促すという観点では,発達障害児固有の困難さを障害特性から捉えるのではなく,活動・参加の観点から捉える必要があるため,ICFで定義されている分類/コードを専門家の合意として捉え,ICFを構成する各要素について,アプリ活用の事前検討の観点でPre-AIMを試作した。 初年度にPre-AIMを構築し,2年目にPre-AIMの精錬を実施する予定にしており,現段階で順調に進んでいるといえよう。以上の点から,初年度の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,当初の予定では前半に「事前検討事例の追加収集およびPre-AIMの精錬」,後半に「アプリおよび指導事例に対して,メタデータをPre-AIMに基づき付与」を実施する予定であったが,初年度の進捗状況がおおむね順調であったため,予定通り実施する予定である。 現状の課題として,背景因子に該当する環境因子と個人因子が広義であり,体系化することの困難さが挙げられる。現在は環境因子に焦点化し,困難さ導出の観点から検討を進めている。また,ICFの構成要素を横断した概念の整理が必要であり,構築指針について検討している段階である。 また,当初の予定では来年度にシステム構築を実施する予定であったが,Pre-AIM構築の進捗状況に応じて前倒しし,プロトタイプシステムの構築まで今年度中に実施することを想定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表を予定していたが,コロナウイルスの関係で年度末の学会が中止になり,謝金で実施する予定だった業務も実施できなくなったため,次年度に繰り越すこととした。これらは今年度改めて実施する予定である。
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