研究実績の概要 |
本研究では,特別支援教育に携わる教師を対象に,アプリ活用の事前検討を促すことを志向したシステム「アプリ@コンシェルジュ」の構築を目指している。本システムは事前検討すべき内容について,システムとの対話を通して教師に検討させる「検討フェーズ」と,事前検討の結果に基づき最適なアプリおよびアプリを用いた指導事例を推薦する「推薦フェーズ」により構成される。つまり,ユーザである教師にとっては,アプリを検索する過程で事前検討を実施させることが可能になる。 システムの構築にあたり,検討フェーズにおいては,教師とシステム間の対話を実現するための体系化された知識が必要と考えた。申請者はこれを「Pre-AIM(Prior Examination - Application Introduction Model)」と定義し,ICTの事前検討場面を収集・分析することによるPre-AIMの構築を本研究の第一の目的とする。次に,推薦フェーズにおいては,アプリと指導事例に対してメタデータをPre-AIMに基づき適切に付与することで,これらの推薦が可能になると考えた。そこで,アプリと指導事例に対してメタデータを付与したうえで,プロトタイプシステムを用いた実運用を通して精錬することを本研究の第二の目的とする。 2年目は第一の目的であるPre-AIMの構築作業を実施した。具体的には,実践事例から概念を抽出した上で,「困難」と「環境調整」の観点から知識の整理・体系化を実施した.試作したPre-AIMの妥当性について調査すべく,Pre-AIMで定義した概念をメタデータとして実践事例に付与した結果,「困難」と「環境調整」を別に定義することにより,児童側の要求と教師の行動(環境調整)を対応づけることが可能になる点,環境調整が状況に応じて整理される点,の2点で妥当性を確認した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は当初の予定通り,「事前検討事例の追加収集およびPre-AIMの精錬」および「アプリおよび指導事例に対して,メタデータをPre-AIMに基づき付与」の作業を実施した。まず,実践事例から概念を抽出し,Pre-AIMの精錬作業を実施した。 ver.1では,合理的配慮を「児童生徒が困難さを感じる場面に対して実施されるもの」と仮説を立て,合理的配慮を,「困難」と「場面」の観点で整理した.概念の整理にあたり,ICFを参考に,当事者の困難さを定義した.しかし,指導場面や状況を具体的に表現できない点がver.1の課題として挙げられた. 次にver.2では,合理的配慮を「困難」「配慮目的」「配慮内容」の3観点で定義し,さらに配慮目的を合理的配慮の3観点11項目に基づき定義した.結果,学校現場の実態を具体的に表現することが可能となった一方で,配慮目的と配慮内容を明確に区別することの困難さが示唆された. ver.3では, 配慮目的に「配慮内容」と「困難」の双方の概念が含まれる点に着目し,合理的配慮を「困難」と「配慮内容」の2観点で再定義した.結果,配慮目的と配慮内容を明確に区別して定義することができた一方で,配慮内容の定義が曖昧であるため,概念間で重複や不整合が生じる結果となった. 最終的には,合理的配慮を「困難」と「環境調整」で定義した.配慮内容に教師が配慮に至るまでの心理的葛藤と実際の配慮行為が混在している点が着目し,合理的配慮を「環境調整」の視点から整理した. 試作したPre-AIMの妥当性について調査すべく,定義した概念をメタデータとして実践事例に付与した結果,「困難」と「環境調整」を定義することにより,児童側の要求と教師の行動(環境調整)を対応づけることが可能になる点,環境調整が状況に応じて整理される点,の2点で妥当性を確認した.
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