近年、後天性共同性内斜視が増加傾向にある。その要因としてスマートホンの至近距離の長時間使用が考えられている。また文部科学省は、GIGAスクール構想の中でコンピュータやタブレットなどデジタル器機デバイスの使用を距離30cm以上・連続30分間以内の使用を推奨している。この基準に対して2つの実験を行った。両者とも測定項目は、他覚的検査として、屈折値、眼位検査、他覚的調節反応(調節安静位、調節力、調節ラグ)、自覚症状検査(ドライアイ、眼痛など)は、computer vision syndrome questionnaire(CVS-Q)で測定し把握した。 「実験1」iPad①・B5紙媒体②による視機能への影響を比較検討した。 足し算と引き算問題を30分間連続で施行させた。①では、調節ラグが減少し、5名に眼位の内方偏位化が認められた。CVS-Q値は、①では②と比較して有意に症状が多かった。「実験2」デジタル器機としてNintendo Switchを用い視機能へ及ぼす影響について検討した。Nintendo Switchを用い、テレビモード(視距離:120cm、画面サイズ:32インチ)、携帯モード(視距離:30cm、画面サイズ:6.2インチ)で計2回の実験(各30分ゲームを施行)を行った。結果、テレビモードの場合遠見眼位が外方偏位した。一方、携帯モードでは至近視距離のため、融像性輻湊と調節性輻湊が加わるため眼位が内方偏位した。一方、テレビモードでは遠見眼位が、有意に外方偏位した。両者ともに眼痛・羞明の訴えが多かった。 総括:令和元年~令和4年までの一連の研究から以下のことが明らかとなった。1)デジタル器機の至近距離での使用により眼位は内方偏位する。2)眼の疲れ、眼痛、ドライアイ症状および頭痛を訴えることが明らかとなった。研究の限界は、短期実験であり一過性の斜位変化の可能性がある。
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