研究実績の概要 |
わが国では、災害医療に携わる人材の養成に、派遣型チーム演習、現場対応トリアージ演習、机上ロールプレイングなどが行われているが、被災者の医療による救護を中心にした演習であるため、災害時の医薬品供給や薬事関連の法規を学修する環境が整備されていない。申請者らがe-learningと連携を図るProblem-Based Learning (PBL)は、従来から実施されている座学形式の講義は行わず、学習者が主体的かつ能動的に学習・演習に参加し、問題解決のための情報収集、活発な自発的討論・討議などを通して、学修を進行させる。欧米において、医師、薬剤師、看護師および理学療法士などの医療系学部における職能教育課程の多くの教科がPBLを中心に構成され、臨床推論能力を開発する効果的な教育方法として認められている。申請者は、薬学生・薬剤師を対象にした災害薬事研修にバーチャルリアリティ(VR)技術による体験型e-learning 教材をPBL型演習に導入し、その学習効果を確認した(江川ら, 16th ACCP, Korea, 2016)。本研究は、災害薬事における災害時薬事概況報告システムと連携した災害薬事のためのe-learningを開発することに加え、e-learningとIoT技術が連携したPBL型災害薬事実働演習により災害時に適切な医療が提供できる人材育成を強化するものである。計画している具体的な研究項目は、①災害薬事における医薬品供給体制をモニタリングするための薬剤版J-SPEEDの開発とe-learningへの展開②災害時処方箋調査による薬剤版J-SPEEDの後ろ向き検証と災害薬事e-learning コンテンツの作成③災害薬事e-learningと連携した災害薬事実働PBL演習方略の構築、④VR教材と連携したモバイルe-learningの学習効果の検証と評価、の4つである。最終年度は、災害薬事コーディネーター研修や災害支援薬剤師研修にて作成したコンテンツを研修プログラムに組み込むことが出来た。
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