研究課題/領域番号 |
19K03101
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研究機関 | 京都経済短期大学 |
研究代表者 |
森崎 巧一 京都経済短期大学, 経営情報学科, 教授 (30405724)
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研究分担者 |
郭 潔蓉 東京未来大学, モチベーション行動科学部, 教授 (70601326)
小路 真木子 京都経済短期大学, 経営情報学科, 教授 (90300251)
高木 亜有子 湘北短期大学, その他部局等, 准教授 (20369466) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 印象評価 / ポップカルチャー / 漫画 / アニメ / 異文化感性理解 / 国際文化比較 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまで行ってきた感性研究の手法を応用し、各国の人々の感性的な文化交流を支援するためのツールの実現を目指している。 まずは、昨年度まで行ってきた研究活動のアウトプットとなる論文および口頭での研究発表に力を入れた。論文発表では、日本の代表的な大衆文化コンテンツを対象にした意識調査や印象語調査を行い、特に日本の漫画・アニメ作品の文化的価値が国内でどのように評価をされているのかについて検討を行った論文を、研究者らが所属する比較文化学会の学会誌に査読を受けて発表した。また、日本の漫画やアニメに特化した印象語収集WEBアンケートシステムと、そのデータベースを管理するためのツールの構築に関する論文を、京都経済短期大学論集で査読を受けて発表した。口頭発表では、以前より行ってきた画像解析ツールのうち、基本図形の分析に少しでも近づけることができたものとして、任意の画像から「円」と判定できるものを数え上げるための「円検出ツール」と、それを用いた新たな印象評価分析法の可能性についての研究発表を、日本比較文化学会の全国大会・国際学術大会にて行った。また、漫画やアニメに対する日本人の意識と感性について分析した内容は京都経済短期大学経営・情報学会研究報告会にて発表した。 次に、昨年度から開発中であった印象評価WEBアンケートの開発を完了させ、さらに多言語化に取り組んだ。提示する印象語は先の印象語収集の結果を参考に選定し、またアンケート項目には昨年度行った意識調査の一部も取り入れ、海外の人が日本の漫画やアニメにどのような意識を持っているかも併せて収集できるようにした。多言語化においては、翻訳者などの協力を得ながら、WEBアンケートツールの中国語(繁体)、英語、フランス語版も開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度の研究計画では、調査の対象を海外に広げて実施することを計画したが、WEBアンケートシステムの開発に時間がかかり、実際に行うことはできなかった。その理由としては、コロナ禍により、本研究に携わる各メンバーの研究にかけられる時間がかなり減少し、また、その影響で、教育への負担も増大したこと、研究分担者の1名が本研究プロジェクトから辞退することになり、調査の準備やシステム開発のペースが下がったことなどが挙げられる。さらには、各メンバーの諸事情が重なって研究が停滞する時期も若干あった。したがって、研究は大きな方針転換が必要となった。 本年度の前半は、上記事情を考慮して、メンバーそれぞれで行ってきた研究活動のアウトプットを行うことを優先し、特に、これまで少なかった論文発表に注力した。この活動により、成果を出せただけでなく、今後の研究方向性もある程度絞り込みすることができた。 本年度の後半は、昨年度からの課題である、調査範囲の海外への拡張に取り組むべく検討を進めたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、特に海外での調査に支障が出ており、実施は現在においても大変難しいと思われる。したがって、日本国内に在住している外国人を対象に、小規模ではあるが調査を行っていくこととした。現在、調査対象として、外国人教員や外国語を教える専門学校に協力をお願いするだけでなく、外国人が経営する飲食などにも足を運び、常連客の外国人やその知人にも協力を仰ぎ、多方面から手段を講じてを外国人のアンケート協力者を集めることとした。さらに、ネイティブの翻訳者の協力を得て、印象評価WEBアンケートの翻訳を行い、中国語(繁体)バージョン、英語バージョン、フランス語バージョンがほぼ完成した。今後はネイティブチェックを行いながら最終調整を行う段階となった。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、調査の対象を海外に広げて実施することは難しいと思われる。したがって、小規模とはなるが、日本国内に在住している外国人を対象にアンケート調査を実施していく予定である。そのためのWEBアンケートシステムはほぼ完成しているが、一回のアンケートでできるだけ多くの情報を獲得するために、意識調査と印象評価の調査を同時に行えるようなアンケートツールとして、項目や表現を改善する。その後、翻訳者やネイティブスピーカーの協力を得ながら、各言語での表現も再検討し、より分かりやすく、回答しやすいツールとして完成させる予定である。また、印象評価アンケートとは別に、スピンオフとして、外国人を対象としたより詳細な意識調査を行っていくことも計画している。 印象評価データの分析では、日本の漫画・アニメのキャラクターが日本人と外国人でどのような印象特徴を有していて、相互間にどのような違いが生じているのかを確認したい。特に異なる文化的背景を持つ外国人が日本の漫画・アニメ文化にどのような価値を見出しているのかを明らかにしたい。また、違いを生んでいる印象特徴がどのようなものであるかが分析できれば、その特徴を抽出し定量的に測定する画像解析ツールの開発につなげることができる。画像解析においては、これまで開発してきた円検出などの基本的な造形要素の検出方法の活用の他、昨年度から検討しているディープラーニングの活用なども行って、キャラクターの画像特徴の分析を行っていきたい。 以上の分析をもとに、異文化感性理解を支援するツールの開発へとつなげていくが、最終的には日本人と海外の人との文化的感性の類似性や相違性を分かりやすく示し、文化の多様性についての相互理解に繋がるようなツールを目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一人が諸事情により辞退されたので、予定していた分担金の一部が使用されなかった。また、当初予定していたPC等機材購入をせず研究を進めた(次年度購入予定)。コロナ禍により学会参加はオンラインとなり、旅費が不要であった。次年度研究が延長されるので、機材購入、アンケート調査、学会参加等に使用する予定である。
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備考 |
印象評価WEBアンケートは開発中。
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