研究課題/領域番号 |
19K03105
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
種村 剛 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任講師 (20759740)
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研究分担者 |
三上 直之 北海道大学, 高等教育推進機構, 准教授 (00422014)
古澤 輝由 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (50814919)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 科学技術コミュニケーション / 演劇 / 教育 / 市民参加 |
研究実績の概要 |
【具体的内容】 演劇を用いた科学技術コミュニケーションの実践を以下、2件実施した。1)「弦巻楽団×北海道大学CoSTEPコラボレーション企画「私たちが機械だった頃」」(2019年7月13日),2)「討論劇と評決ワークショップ「“わたし”は機械で取り戻せるのか? :討論劇で問うブレイン・マシン・インターフェース開発の是非」」(2020年1月26日)。前者については、演劇の専門家との協働し、科学技術のメリットとデメリットの比較だけではなく、そのような状況における登場人物の立場や価値観(コンテクスト)を伝え、その上で先端科学技術の社会実装の是非を考える市民参加の対話の場として設計した。後者はPBLとして学生と共に演劇を制作した。演劇を作り、演じることが科学技術コミュニケーション教育においてどのように機能するかを実践を通じて考察した。以上の実践および関連する研究知見について、学会報告2報告をおこなった。加えて、上記実践のインタビュー調査の結果を専門ジャーナルに掲載した。 また、上記の実践とは別に、演劇を用いた科学技術コミュニケーション教育を行なっている団体にインタビュー調査ならびにメールを用いた調査を実施した。そのことで、他の団体における、演劇を用いた科学技術コミュニケーション教育の実践についての知見をえることができた。 【意義・重要性】 科学技術コミュニケーションに演劇を用いることで、科学技術のメリットデメリットを考えることだけではなく、それぞれのステークホルダーの価値観や社会的立場などの「コンテクスト(文脈)」の違いを含んだ情報提供および市民対話が可能になることが明らかになった。また、教育効果として受講生も異なる他者の価値観を想像することの重要性に気づきがあることがわかった。また、演劇制作過程において脚本を作り、演じることが学習者に与える影響についても知ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は予定した科学技術コミュニケーションの実践を2件実施した。実践結果のアンケート調査、インタビュー調査を行うことができた。インタビュー調査の1件については、査読付きノートとしてまとめることができた。アンケート調査の結果についても、学会報告を行い、当報告に加筆修正を行うことで、査読付きの実践報告としてジャーナルに投稿しているところである。また、科学技術コミュニケーション教育において涵養が目指される能力についての文献研究および政策過程の分析を行い、学会報告を行うことができた。以上より、本研究課題の進捗は、実践についても、その実践の分析についても、概ね順調に進展していると思われる。 しかし、2020年度は新型コロナウイルスの影響があり、予定していた科学技術コミュニケーションの実践や、インタビュー調査、学会報告などができない可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2020年度の推進方策として、まず、演劇を用いた市民参加型の科学技術コミュニケーション実践を3件実施する予定である。そのうち一件については、サイエンスアゴラで実施することを検討している。これらの実践については、研究代表者が中心となり、参加者のアンケート調査、参加した観客のディスカッションについての会話分析、参加者および実践者へのインタビュー調査を行う予定である。これら調査より、演劇を用いた科学技術の社会実装の対話の場が、具体的にどのように展開し、演劇を使った表現がどのように参加者に対して機能したのかを明らかにする。また、科学技術コミュニケーター養成プログラムにおいてPBLを通じて科学技術演劇を制作することで、受講生に与える教育効果について引き続き検討していく。特に、初年度(2019年度)の研究において先端科学技術の社会実装における対話の場において、演劇を用いることで、他者の「コンテクスト(文脈)」を想像し、コンテクストのすりあわせの重要性に気づく傾向があることが明らかになった。今年度については、この点についてさらに分析を行うことを検討している。 ただし、今年度は新型コロナウイルスの影響で、演劇を用いた市民参加を伴うサイエンスコミュニケーションの実践を行うことが難しくなっている現状がある。この場合は、特に文献研究に力を入れ、演劇と教育の関連性についての先行研究をレビューし、演劇を用いた教育の効果研究についての深度を深めていきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画に入れていた、2019年度の演劇と教育に関する助言指導に対する謝金が相手の都合により不要になったため、次年度使用額が発生した。2020年度では、これらの使用額をまとめ、演劇の専門家による演劇の作成に使用する予定である。
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