研究課題/領域番号 |
19K03107
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
鈴木 明彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (20235930)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 海岸漂着物 / ビーチコーミング / 自然史教育 |
研究実績の概要 |
令和2年度は、北海道日本海側の複数の海岸において、定期的な試料採集を行った。本年はアオイガイ等の暖流系漂着物を確認することができ、その原因を漂着物の解析から特定した。特に冬季に対馬暖流の影響が例年より優勢であったことを主要な要因と考えた。また、北海道の日本海側の穿孔貝の整理・分析を継続して行った。穿孔貝の生物地理的多様性とそれをとりまく沿岸環境との関連を古生物学的な視点から考察した。特に穿孔貝の分類や生態、基質との相関、穿孔痕の生痕学的分類を試みて、数々の新知見を得た。 北海道の日本海側の複数の海岸において、海浜から定量的試料を採集し、マイクロプラスチックの室内分析を行った。従来北海道ではこのような検討例はなく、マイクロプラスチックの動態を海浜環境汚染の視点から議論した。このうち特に石狩湾沿岸のマイクロプラスチックの動態については、その概要が判明したので、さらに検討を継続する予定である。 毎年開講の大学の授業では、海岸漂着物を活用した体験型の環境教育を実施した。具体的には「アカデミックスキル」、「地学実験」、「地質野外巡検」等の授業で漂着物を取り上げ、自然史教育の視点からレポートをまとめた。また、夏の教員免許状更新講習において、海岸漂着物や化石を検討対象とし、実践的な活用例を紹介した。さらに学生とともに小・中学校の地学分野を対象とし、北海道北広島市から産出した第四紀貝類化石の教材化を試みた。コロナ禍のためにアウトリーチ活動が制限されていたが、オンラインを活用して、限定的に体験型アクティビティを紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一連の研究成果は学会で発表し、順次学会誌に公表した。特に北海道日本海側における暖流系生物の漂着記録の解析は、海面水温の温暖化を指示する例として注目された。また、白老町の奇岩に関する論文が公表され、地域教材として活用された。 前年度に出版され好評であった海辺の自然史教育の入門書『海の生物多様性を守るために』(西日本出版、2019)を、大学の授業科目のほか、免許状更新講習やオンラインイベントでも活用した。漂着物に基づいた自然体験活動は、学生のみならず現職教員にも好評で、それはアンケート結果に反映されていた。 コロナ禍のためにアウトリーチ活動が制限されていたが、オンラインを活用して、限定的に体験型アクティビティを紹介した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は以下の2点について、調査研究と成果公表を行なう。 (1)夏に利尻・礼文島の野外調査(2泊3日)、秋に余市・積丹地域の野外調査(2泊3日)を行い、海岸の地形・地質調査及び打ち上げ貝類やマイクロプラスチックの採集を重点的に行う。また、前年度と同様に北海道日本海側の複数の海岸において、定期的な試料採集を行う。そこでこれらに関わる調査旅費や消耗品を計上した。 (2)一連の研究成果を学会(日本貝類学会や漂着物学会)で発表し、主要部分を論文として学会誌に投稿する。そのための学会旅費や論文別刷代金を計上した。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:コロナ禍のため学会出張がなく、オンラインとなったため。 使用計画:今年度の学会出張旅費として使用する。
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