• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実施状況報告書

小中学校を通した電気単元指導の改善に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K03109
研究機関宇都宮大学

研究代表者

伊東 明彦  宇都宮大学, 教育学部, 教授 (70134252)

研究分担者 出口 明子  宇都宮大学, 教育学部, 准教授 (70515981)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード理科教育 / 科学教育 / 物理教育 / 電気概念の獲得 / 電圧概念 / 実体的水流モデル
研究実績の概要

本研究の目的を達成するため,平成31年度(令和元年度)は以下のような取り組みを行った。
1.大学生に対する電流・電圧概念調査を実施した。教員養成学部の第1学年生およそ100人を対象として,ごく初歩的な電気概念の理解度調査を実施した。その結果,電流の分岐・合流におけるキルヒホッフの法則(分岐点に流入・流出する電流の相和は0である)については概ね良好な理解をしていることが明らかになった。しかし,電圧に関する理解は極めて貧弱であることが分かった。さらに,基本的には定電圧装置であるという乾電池の性質についてはほとんど理解されていないことが明らかになった。
2.中学生を対象として,回路内の任意の2点間の電圧を測定することが可能な実験回路(以下,電位測定回路と呼ぶ)を用いて,電圧の変化について考えさせることにより電圧概念の定着をめざす授業実践を行い,その効果を検証した。その結果,生徒が持つ電圧に対する誤解を自ら認識させることができたが,電圧が電気的な位置エネルギーに相当することを理解させることは一度だけの授業実践では困難であることが分かった。ただ,電圧についての思考を深めることにより,豆電球の明るさに関する理解が促進された。この授業実践については,日本理科教育学会全国大会においてその成果を発表した。
3.電圧概念の指導に有効性がすでに示されている実態水流モデルをより有効に活用するための映像教材の作成を行った。
これらの結果から,中学校における電圧概念の指導が極めて貧弱であることが電気単元全体の理解を妨げていることが強く示唆された。また,小学校における電流偏重の授業内容の見直しも強く示唆された。これらの結果から,2年目の研究計画を考えるうえでの大きな成果が得られたということができる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【研究実績の概要】に述べたように,平成31(令和元)年度は,以下のような研究実績を上げたので,研究はおおむね順調に進展していると判断した。
1.大学生に対する電流・電圧概念調査を実施し,教員養成学部の大学生(すべての分野の学生)が電流電圧に関して概ね以下のような概念を有していることを明らかにした。①電流の分岐・合流におけるキルヒホッフの法則については概ね良好な理解をしている。②電圧に関する理解は極めて貧弱である。③乾電池の性質についてはほとんど理解していない。この結果は研究2年目以降の小中学校における指導法の開発に際しての重要な知見であり,研究遂行を大きく前進させたと考えられる。
2.中学生を対象として電位測定回路を用いた授業実践を行い,生徒が持つ電圧に対する誤解を自ら認識させることができたが,電圧が電気的な位置エネルギーに相当することを理解させることは一度だけの授業実践では困難であることが分かった。この成果については2019年8月に静岡大学で開催された日本理科教育学会全国大会において発表した。この結果により,中学校における電圧指導の際の留意点を明確にすることができた。
3.電圧概念の指導に有効性がすでに示されている実体水流モデルをより有効に活用するための映像教材の作成を実施し,今後の指導法開発に向けた重要な成果を上げた。

今後の研究の推進方策

令和2年度初頭時点において,新型コロナウィルス感染症の影響で学校現場における調査や授業実践が全く行えない状況にある。そのため,令和2年度は主として1年目の実践に対する分析に基づき,電圧概念を中心とした小中一貫の電気分野の指導法の開発を行う。具体的には,小学校4年における電圧概念の導入を含む乾電池のつなぎ方の学習の改善,小学校6年における電気の利用単元における電圧概念を導入することの効果の検証,中学校2年における電流・電圧・抵抗の関係の理解増進のための指導計画を策定するとともに,教材開発を行う。令和3年度は小中学校における授業実践を通して開発した指導の評価を行い,研究の総括を行う。
また,状況が許す範囲内で,児童生徒を対象とした電流や電圧などの電気学習における基本的な概念の獲得状況についての調査は引き続き実施する。その際,インターネット環境を用いた概念調査の実施についても検討する。
さらに,検索結果新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」に対応するよう,ICT教材の開発,ウェブサイトを通した情報発信などにも取り組む。

次年度使用額が生じた理由

電気概念調査のため購入予定していたドキュメントスキャナー(約50万円)について,代替機が利用可能となったため,購入を取りやめ次年度の研究に繰り越すことにより経費のより有効な活用が可能となると判断した。また,年度後半には新型コロナウィルス感染症のため全国的な学校休校措置が取られたため,学校と連携した一部の計画が実施できなかった。
令和2年度は,繰越金を有効活用するため,従来の研究計画に加えて新たにICT教材の開発研究を行う。また,新型コロナウィルス感染症の蔓延に備えたインターネット教材の開発およびウェブサイトの構築による情報発信の充実にも取り組む。
その他,従来の計画通り,研究打合せ旅費,調査資料の整理のための謝金,論文投稿費等に助成金を使用する。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] 中学生の意識や理解を考慮した電気学習における水流モデルの検討2019

    • 著者名/発表者名
      石井俊行,荒川友希,伊東明彦
    • 雑誌名

      学校教育実践ジャーナル

      巻: 3 ページ: 3-10

    • 査読あり
  • [学会発表] 中学生の電圧概念形成のための授業実践2019

    • 著者名/発表者名
      伊東明彦,菅生崇夫,出口明子
    • 学会等名
      日本理科教育学会全国大会

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi