研究課題/領域番号 |
19K03112
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
平田 昭雄 東京学芸大学, 教育学研究科, 講師 (60165173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 防災教育 / 自然災害 / 中等理科 / 科学的リテラシー / 市民生活 / 義務教育 / 防災リテラシー |
研究実績の概要 |
青森市、弘前市(青森県)、水戸市(茨城県)、つくば市(茨城県)、前橋市(群馬県) 、伊勢崎市(群馬県)、静岡市、磐田市(静岡県)を当面のモデル地域に設定し、それぞれの管轄自治体が公表している防災ハザードマップ等を手がかりに、各地域に暮らす市民にとって心配で気がかりな自然災害について検討したところ、国内の多くの地域において共通する市民の警戒するべき自然災害の多くは、(1)洪水による浸水と土砂災害、(2)津波と地震による被害、(3)その他、に大別されることが判った。 次に、当該地域に生活しそこで暮らす市民の日常生活を熟知する当該地域出身の大学生の参画を求めて検討を重ねたところ、次のことが明らかとなった。 個々の市民が真に必要とする防災リテラシーとは、日頃心配で気がかりな自然災害自体についての科学的な知識・理解もさることながら、それが発生した際にそれが原因で連鎖的に発生する各個人、各家庭のレベルの困難、すなわち、家屋や建造物他の倒壊・損壊・消失や、電気、ガス、水道といった社会的インフラの機能不全、道路や鉄道施設の損壊により生じる交通、物流の障害と、それらによって連鎖的に発生する帰宅困難、孤立、さらには、それらの長期化による生活必要物資の不足、健康障害、感染症などの疾病の拡大、等々の困難といったものを想像し、そうならないよう、また、そうなったとしても被る被害を最小限に止めるよう常日頃から備えるために、さらには、いざ、そうなったときに的確に思考し判断し行動するために、必要かつ有効な科学的に正しく妥当な知識(理解)・技能と思考力・判断力等であろう。 本年度の研究により、こうした防災リテラシーを個々の市民が義務教育段階で身につけることによって、地域に暮らす個々の市民が自然災害が発生した際に、科学的に妥当な防災・減災行動を主体的に考え、判断、工夫して選択できるようになる、との知見の獲得に至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の本研究の進展(「研究実績の概要」で前述)により、「当該地域に暮らす市民にとって真に必要な科学的防災リテラシーを明らかにしつつ、その形成に寄与する有為な中学校理科の授業パッケージを開発する」とした本研究の目的の達成の目処が立った。このため、今年度終了時点における本研究の進捗状況については「(2)おおむね順調に進展している」との評価が妥当と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的である「当該地域に暮らす市民にとって真に必要な科学的防災リテラシー」を明確にするために、次年度(2年目)は、実践を想定する中学校の通学区域を「当該地域」に焦点化することを検討する。 これにより、開発する中学校理科の授業において実現したい活動(思考、判断、表現、等)が焦点化され明確になるとともに、そうした活動を担保する上で必要な知識(理解)・技能の的確な特定、精選が可能になろう。 因みに、次年度は、国内の公立(市区町村立)中学校100校程度を任意に抽出、選定し、そこでの実践を想定した授業の試作を試みる。これにより、平成30年度改訂版の中学校学習指導要領の完全実施が開始される次々年度(3年目)に向けて、全国の中学校理科教育関係者への提案に繋げてゆく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止対策のため、3月に予定していた調査の方法に軽微な変更(回答質問紙の回収方法が「直接」から「郵送」に変更)が生じた。当該年度の所要額に残額が発生したのはこのことによる。 次年度のフィールドワーク(教育現場における意見交換等)の際の旅費および謝金等に繰り入れての使用を計画する。
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