研究課題/領域番号 |
19K03112
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
平田 昭雄 東京学芸大学, 教育学研究科, 准教授 (60165173)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 防災教育 / 自然災害 / 中等理科 / 科学的リテラシー / 市民生活 / 義務教育 / 防災リテラシー |
研究実績の概要 |
教員養成系学部の理科専攻・専修学生の協力を得て、自らがその地で暮らす市民の日常的な実情に詳しい出身地域の公立(市区町村立)中学校での実践を想定した授業の創成を試みた。これにより、計103地域について、「当該地域に暮らす市民が備えたい防災リテラシー」の抽出に成功。授業において実現したい活動(思考、判断、表現、等)が焦点化されるとともに、そうした活動で必要な知識(理解)・技能の特定、精選が可能となり、それらの獲得形成を実現するような「中学校理科における防災教育のプログラム」の原案を得るに至った。 ここで、これら103件のプログラム(授業計画) 原案が想定するそれぞれの地域で暮らす市民にとって気がかりな自然災害について分類、集計したところ、地震が56件(内「津波」併記が4件、「液状化」「火山噴火」併記がそれぞれ1件)、風水害が36件(内「土砂災害」併記が4件、「河川氾濫」併記が18件)、その他が4件(「高潮(浸水)」「大雪」がそれぞれ1件、「落雷」が2件)、分類不可が8件であった(重複カウントあり)。 加えて、上記103件のプログラム原案の作成過程の分析から次の知見を得た。 1)当該地域の市民の暮らしに詳しい中等理科教員であるならば、その地域で暮らす市民に有為な科学的防災プログラムの実践を実現し得る。 2)プログラム設計の序盤、構想の段階では当該地域に想定される多岐にわたる災害被害事象が抽出されるが、具体的な指導案(略案)を作成する段になるとそれらの多くは扱われないこととなり、精々が授業の導入でもしくは発展的に終末で触れられるに留まるケースが多い。すなわち、多岐にわたる災害被害事象の理解や対応する思考力、判断力の獲得形成を目標とするプログラム(授業)を設計し実践するにあたっての中等理科教員が備えるべき科学的知見は膨大で多岐に渡り、力量面での課題が少なからず存在することが危惧される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理由 今年度の本研究の進展(「研究実績の概要」で前述)により、本研究は、「当該地域に暮らす市民にとって真に必要な科学的防災リテラシーを明らかにしつつ、その形成に寄与する有為な中学校理科の授業パッケージを開発する」とした本研究の目的の達成に向かって大きく前進した。このため、今年度終了時点における本研究の進捗状況については「(2) おおむね順調に進展している。」との評価が妥当と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
前年度からの継続的な取り組みにより、本研究はこれまでに、青森県大鰐町、秋田県大潟村、茨城県水戸市、群馬県伊勢崎市、埼玉県桶川市、埼玉県さいたま市、埼玉県所沢市、東京都小平市、静岡県磐田市の計9の国内特定地域の中学校での実践を想定した科学的防災教育プログラムの開発に至っている。 第3年目の次年度は、これら以外の地域の多様な実情にも対応したさらなる多様なプログラムの開発を試みるとともに、次年度(令和3年度)より使用が開始される平成30年度改訂版中学校学習指導要領に準拠した中学校理科の検定教科書を使用した中学校理科学習との整合性への配慮を中心としたプログラムの改善を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍にあって、大学は入構規制が続き、今年度の研究は協力者(学生)のテレワーク中心の作業により進められた。このため、支出費目「謝金等」の執行が増額した。これへの対応として、支出費目「物品費」の執行を大幅に抑制した。 他方、同じくコロナ禍にあって、研究成果を発表した学会大会、研究集会が、いずれもオンライン開催となり、支出費目「旅費」相当の執行が0となった。 これらのことが結果として次年度使用額発生の理由と考えている。発生した額は、次年度の「物品費」に繰り越すことにする。
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