研究課題/領域番号 |
19K03114
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
村田 享香 新潟大学, 経営戦略本部, 准教授 (40529393)
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研究分担者 |
三宅 恵子 (村山恵子) 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任講師 (40404058)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 科学コミュニケーション / 非言語コミュニケーション / 性差 / 女子中高生の理系進路選択支援 |
研究実績の概要 |
令和2年度は,「女子中高生が高く評価する講師はどのようなNVCを使用しているか」を明らかにするための講師のビデオ映像の行動コーディング分析を中心に研究を進めた。分析にあたり対象データを絞り込むため,まず,各講演の受講者アンケートの詳細分析を行った。データセットは,平成30年度に同一受講者(中学生)に対して実施した科学講演8回の受講後のアンケートデータである。分析の結果,講演テーマの研究分野は近いが,講師の性別は異なり,且つ,受講者の性別によって回答傾向が異なる2つの講演(A: 女子生徒からの評価が高く男子生徒からの評価は低い傾向,B: 男子生徒からの評価が高く女子生徒からの評価は低い傾向)が見つかった。そこで,この2講演の講師のビデオ映像を非言語的な5つの行動(NVC)についてコーディングし,各行動の回数や持続時間,全講演時間に占めるその行動をとった時間の割合などを測定した。その結果,2講演で行動の傾向が異なっており,講演Aに多くBには少ないNVCがあることがわかった。 この講演Aに特徴的なNVCが受講者アンケートの回答傾向にどの程度の影響を与えているかを解明するには,他の講演においてもこのNVCを測定し,さらに,振る舞い以外にも,言語的要素を含む,話し方(声の大きさや口調など)やスライド表現などについても比較する必要があることから,それぞれの分析に着手した。話し方については,語尾や単位時間当たりの話数などを測定するために音声データの抽出と文字起こしを行い,スライド表現については,1枚当たりの文字数や文字の大きさ,文字以外の情報が占める面積割合などの測定を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は,受講者アンケートの詳細分析により,講師のNVCについての行動コーディング分析を行う講演を2つ(A: 女子生徒からの評価が高く男子生徒からの評価は低い傾向,B: 男子生徒からの評価が高く女子生徒からの評価は低い傾向)に絞り込み,この2講演の講師のビデオ映像を5つのNVCについてコーディングすることができた。その分析の結果,2講演で行動の傾向が異なっており,講演Aに多くBには少ないNVCがあることがわかった。しかしながら,この行動が受講者アンケートの回答傾向に与える影響を評価するための他の要素(話し方,スライド)の分析については,着手したばかりで結果が出ていないこと,この他に予定していた,理工系で特に男性の多い分野とそうでない分野での講師のビデオ映像データの入手については,新型コロナウイルス感染拡大防止に伴い,撮影を予定していた卒業研究発表会がオンラインでの発表となり,本研究において比較可能なデータにはならないため入手を断念したことなどから,「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は,引き続き,講師のNVCについての行動コーディング分析と,話し方やスライド表現の分析を行い,これらの言語・非言語的要素と受講者アンケートの回答傾向との相関関係等を調べることにより,講師のNVCが受講者の印象や興味関心の高まりにどのような影響を与えているのかを明らかにする。それにより,女子中高生が高く評価する講演における講師のNVCを特定し,女子中高生の科学講演への関心をより高めるNVC表現技法を提案することを目指す。さらに,可能であれば,特に男性の多い分野とそうでない分野における研究発表会等のビデオ映像データを入手し,講師の性別や分野の違いにおけるNVCの特徴とそれに対する女子生徒の評価を基に,状況に応じて効果的な表現を提案できるようになることを目指す。最終的に,これらの研究で得た知見を論文や研究集会等において発表するとともに,実際の講演において,提案するNVC技法を実践してその効果を検証し,更なる改善を行う実践型研究へ発展させるための基盤形成につなげていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の影響により,予定していた研究協力者の所属機関における卒業研究発表のビデオ撮影を断念したこと,研究分担者との対面による打ち合わせが行われなかったことから,旅費その他の必要経費が使用されなかった。 卒業研究発表のビデオ撮影に関しては,状況が許す限り,翌年度に実施する予定である。また,翌年度は最終年度であることから,研究集会等を計画し,本研究結果を広く公表するために使用する予定である。
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