研究課題/領域番号 |
19K03115
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
中村 琢 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (70377943)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 探究学習 / 理科授業 / レッスンスタディ / カンボジア |
研究実績の概要 |
本研究は日本の中等教育の理数の授業において,科学探究能力を育成する指導法の開発と普及を目的としている。5年目の2023年度は,研究の総括として次の3点について研究を推進した。 (1)高等学校で先進的に取り組まれている探究活動を正課の理科授業に取り組む事例を収集し,大学教員と高校教員が協働で探究型授業の事例をまとめた。その手法を基にして,小中学校の理科授業において探究型授業のパッケージを作成し事例を収集した。 (2)授業法を研究する教員間の授業研究ワーキンググループ(授業研究WG)で,探究型の授業を開発した。教育現場で実践し,相互参観し評価する事例を蓄積した。2023年度は教員養成系の大学院生および大学生もWGに参加し,教育学部の学生向けの授業にも同様のレッスンスタディを取り入れ,大学生が探究型授業を行う事例を構築した。 (3)日本で開発した探究型授業の方法を海外に普及させるため,2023年度はカンボジアの2高校で,現地の高校の理科教員に対して出前授業を実践し,レッスンスタディの方法で2つのワークショップを開催した。ワークショップの1つは高校生を対象に力学分野で探究型授業を実施し教員が観察,評価する方法であり,もう1つは理科教員に対して,電磁気学と放射線の内容で模擬授業を行い,協議する方法である。いずれのワークショップでも,日本の大学教員が教師役となり,コンポンチュナム州の教育委員会の教員および,現地の高校教員が参加した。加えて,オンラインのレッスンスタディを月に1回のペースで行い,授業研究WGにはカンボジアの小中学校の教員も参加するなど,オンライン研究会の体制を構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は中等教育の理数の授業に,教育効果の高い探究活動を取り入れた正課の授業パッケージの開発と普及を目的に,以下の通り推進してきた。コロナの影響で1年遅れではあるが,計画段階よりも進めることができた。 (1)科学探究活動の教育効果を測定する探究能力調査を推進し,2022年までに大規模な結果をまとめた。この調査結果を用いて,探究型授業の設計を円滑に行う授業パッケージにまとめた。 (2)小中高等学校の理数教員と大学教員からなる授業研究WGで,協働で授業を設計し,実践,評価を行うレッスンスタディの事例を蓄積した。小学校から高校までの実践に加えて,新規に,教員養成系の大学院および教育学部の授業で探究型授業を組み込むレッスンスタディを構築した。大学生の模擬授業において同様の実践を試行的に行った。 (3)日本の探究型の理科授業をカンボジアで普及させ,効果を検証するために,王立プノンペン大学の研究者,NIEの教員,私立高等学校の理数教員を中心とした授業研究WGで,教員研修のプログラムを設計した。2023年度にコンポンチュナム州の教育委員会と2つの高校で高校教員対象の探究授業のワークショップを開催した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は4年間の計画で4年が終了したあと,コロナ禍のために特に海外との研究で現地訪問が2年間できないことにより,計画の変更を余儀なくされた。このため,研究計画をさらに1年間延長し,まだ実施できていない点について,以下のように実施する計画である。 (1)これまでの実践で開発した事例をもとに,探究型授業を設計し実践する教員のためのパッケージを作成する。 (2)探究型授業の事例をまとめ,動画を含めた資料として公開する。 (3)カンボジアの中学校及び高等学校教員を対象にした,探究型授業の教員研修と模擬授業を物理分野で開発し,現地で実践する。2023年度は日本の大学教員が指導者としてワークショップを行ったが,2024年度はカンボジアの理科教員が主導できるように支援する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究開始時にはカンボジアを訪問して理科教員対象のワークショップおよび授業研究会を実施する計画であったが,COVID-19の影響により現地訪問が2年間できなくなった。授業研究会の中で実施する予定であった教員研修はオンラインの方法でもほぼ目的を達成できた。2023年度からカンボジアを訪問して授業研究を開始したが,当初予定した内容を進めるためにもう1年延長することにした。
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