研究課題/領域番号 |
19K03117
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
大山 政光 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (80332716)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 月の満ち欠け / 球体 / 空間認識能力 / 概念 / 誤答 |
研究実績の概要 |
天文分野の「月の満ち欠け」を苦手としている大学生が多いことが分かっている。そのため、教員を目指す大学生に対し正しく認識できるようにするための指導の在り方、また、将来教員として児童・生徒に指導する際に児童・生徒が正しく認識できる指導の在り方を探る必要がある。そのため、まず月の満ち欠けを苦手とする要素を把握することが重要である。 そこで、紙面に球の半分ずつに異なる色を塗った球体を描き、その球体を中心に8方位に立つ観察者から見た球体の見え方を調べる調査の分析を行った。調査は大学生を対象に実施し、その誤答を中心に分析した。 その結果、球体に対して、次の4つの概念の正しい認識が必要であり、それらに誤りがあることで誤答に至ることが分かった。1)明暗位置的概念。これは、半球に塗られた異なる色の位置の把握する概念である。「月の満ち欠け」では、太陽光が当たり光っている部分と、当たらずに影の部分であることに対応する。2)明暗量的概念:観察者が見たときに見える各色の面積の大小関係。「月の満ち欠け」では光っている部分と影の部分の量的な大小関係である。3)極概念:球の頂点をと捉えられているかの概念である。4)凹凸概念:異なる色の境目を正しくとらえられているか、の概念である。 8方位の位置によって、誤答に至りやすい概念に違いがあることも分かり、これらの概念を正しく認識させる観察や指導、空間認識能力の向上が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「月の満ち欠け」を苦手とする理由の1つに空間認識能力が弱いことがある。「月の満ち欠け」の理解度を上げていくためには、空間認識能力の向上が必要である。そのためには、まず初めに誤答に至るポイントを探ることが不可欠である。 本研究において、色分けした1つの球体を3次元的にとらえる空間認識能力に4つの概念が必要なことが分かり、これらは観察時における観察ポイントとして活用することができる。また、月と観察者の位置関係によって、誤る概念が異なる傾向があることが分かり、この結果は月と観察者の位置関係によって強調する観察ポイントや指導ポイントが変わることを意味している。 このように今回の研究結果から、ポイントを抑えた観察を行い、それにより球体の3次元的な把握を指導することができるようになるため、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
天文分野を指導するにあたり、教員の天文分野の理解向上が必要であり、教員側の空間認識能力の向上が必要である。そのためには、大人の空間認識能力を向上させるトレーニング方法の開発が必要がある。そこで、まず初めに空間認識能力を活用する課題を検討し、教員養成の大学生に対し実施し、効果の検証を行う。
新型コロナの影響で被験者の確保が困難になる可能性がある。その場合は、適宜、被験者数削減や状況に応じたトレーニング方法を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に新型コロナの影響により、調査ができなかったため、2021年度以降に振り分けて実施しているため。
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