研究課題/領域番号 |
19K03121
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
本田 裕子 大正大学, 人間学部, 准教授 (00583816)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 野生復帰事業 / コウノトリ / 兵庫県豊岡市 / 島根県雲南市 / コウノトリ学習 / はく製 / ツシマヤマネコ / ネコの適正飼養 |
研究実績の概要 |
2019年度の研究では、コウノトリの野生復帰事業とツシマヤマネコの保護政策に焦点をあて、調査研究を実施した。コウノトリの野生復帰事業については、事業を最初に取り組んだ兵庫県豊岡市と、野外繁殖に成功した島根県雲南市での調査を実施した。ツシマヤマネコの保護政策については、減少原因にノラネコからの感染症があり、長崎県対馬市ではノラネコ不妊化事業の取り組みがあることから、対馬市でのネコの適正飼養をテーマに調査研究に取り組んだ。併せて、ノラネコを観光資源にしている宮城県石巻市の田代島に訪問し、現状を把握した。 豊岡市の調査では、小学校5年生を対象にコウノトリ学習前後で意識の変化についてアンケート調査を実施した。コウノトリについての意識は肯定的に変化したが、豊岡市については肯定的な意識の変化にはつながっていなかった。コウノトリと豊岡市との関係を含めて学習するようなプログラム開発や制度設計が望まれる。豊岡市は1971年の野生下絶滅時の最後の生息地であり、1971年以前のコウノトリのはく製を保有している小学校・中学校・高等学校についてアンケート調査を実施し39校中6校で所有・展示していることがわかった。豊岡市とコウノトリとの関係を学ぶ上でも、はく製の教育利用を進めていくことが望まれる。雲南市については、市民へのアンケート調査の結果、コウノトリおよび「コウノトリとの共生」に肯定的であり、市が「コウノトリとの共生」をまちづくりの柱にしていくことを後押しする結果となった。 対馬市の調査では、対馬市民にアンケート調査を実施し、ノラネコ不妊化事業について、事業についての内容や意義、事業実施の効果を十分に認知していないことが把握でき、また「行政主体」という意識があることも把握できた。今後のネコ適正飼養を推進していく上で、ヤマネコ学習に組み込む等の意識啓発の方策を積極的に実施していくことが必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査実施にあたり、兵庫県豊岡市、島根県雲南市、長崎県対馬市の自治体の協力を得ることができており、情報収集を含め、調査研究は円滑に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後についても引き続き、野生復帰事業やツシマヤマネコの保護政策を中心に調査研究を行っていきたい。2020年はコウノトリの野生復帰(放鳥)が最初に開始されてから15年が経過することから、豊岡市民を対象にコウノトリおよび野生復帰事業への意識についてのアンケート調査を実施したいと考えている。また、コウノトリ学習については、これまでの調査結果を経年的にまとめて学習効果を検証していくとともに、コウノトリのはく製の教育利用も含めて、環境教育学における教材論やカリキュラム論についての文献調査を進めていきたい。 ツシマヤマネコの保護政策については、全国的なノラネコをめぐる環境問題、ネコ適正飼養の政策の実施状況についての情報収集を進めていくことで、対馬市での取り組みの現状と課題についての考察をしていきたい。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大の状況もあるので、現地での調査については柔軟に対応していきたい。例えば、これまでアンケート調査は郵送法により実施してきたが、インターネット調査についても検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査実施にあたり自治体の協力が得られたことにより印刷費等の経費を当初の予定よりも削減できたこと、また2020年3月に、兵庫県豊岡市や新潟県佐渡市での行政関係者への聞き取り調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により中止せざるを得ない状況になったことがある。 次年度は兵庫県豊岡市でアンケート調査を実施する予定であり、その費用に充足させたいと考えている。
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