本研究は、児童生徒が科学的な概念を深く理解するカリキュラムを教員自身が開発するための組織や方法を理論的実践的に検討するものである。教科と学校種を超えた教員の実践コミュニティ(Professional Learning Community)を組織し、定期的継続的に実践を協働省察した。 (1)概念構築を目指すカリキュラム研究 断片知識論(p-prim論)の検討から得られた示唆を生かし、仮説実験授業や玉田泰太郎の授業等の実践記録を詳細に読み解き、学習者が現象と出会って発する言葉や表現を元にさらなる検討を行った。光や電気など、日常に溢れている現象を物理学的に解釈し理解することについて検討した。また、「力」「光」など共通して理解困難な内容について教員養成大学で授業を行い、学生の語りから多様な理解への道筋を検討した。 (2)学校拠点での省察的実践 福井県内では、「主題-探究-表現」型授業を長年研究し生徒自身による「発意-構想-構築-遂行・表現-省察」の探究サイクルを行なっている福井大学附属義務教育学校を中心とし、公立小・中学校においても、知りたい・解き明かしたいという生徒自身の思いを生かした授業をデザンし実践を行なった。東京では、主に国立大学附属高等学校において生徒自身の主体的な探究を生かした物理の授業実践を積み重ね、研究会において実践を協働省察し、多様な視点から意味づけを行なった。さらに、zoomによる福井と東京の合同オンライン研究会も行い、実践を交流した。実践者自身の省察と教員コミュニティでの協働省察、また生徒自身の省察にもとづいて検討した。 (3)実践記録の蓄積と構造化、評価と改良 実践研究会での検討を経て、いくつかの実践報告を公表した。「月の満ち欠け」や「イオン」「光」「溶解」などにおいて児童・生徒自身の探究と表現を中心とした授業を開発・実践し、記録を研究会や学会等で発表した。
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