本年度は計測過程の標準化と、データ解析の効率的習得手順の確立をめざして研究を進めた。しかし2020年2月から続く新型コロナウィルス感染症の拡大がおさまらず、緊急事態宣言が繰り返し発出される状況が連続したため、現場計測には困難がともなった。そこで、事前情報の集約にもとづき観測計画を立案するためのプログラムの整備を進めた。具体的には2つの地域で、観測計画の立案実習および現地計測実習を実施した。 まず、大阪府高槻市では、谷埋め盛土地域に注目した教育プログラムの開発をおこなった。ここでは、盛土地盤と切土地盤の特定および地形改変量の推定重要である。市が公表している大規模盛土造成地マップと、旧版地形図を対比させて必要な情報を効率的に推定する手順を確立した。さらにモデル地域に適用して観測計画を立案し、実際の計測と解析もおこなった。 次に、奈良県安堵町では、住宅開発時期の違いと災害リスクの高低に注目した教育プログラムの開発をおこなった。ここでは、時代の変遷による開発地域の変化が重要であるため、複数年の旧版地図を比較検討し、現地調査で土地利用の状況を確認することで地域特性の違いを理解することに重点をおいた。この地域でも、非専門家が地域特性を反映した観測予定地点を選定し、測定および解析までの全過程を1人で実施できることができた。なお新型コロナウィルス感染症の拡大により、県をまたいだ移動や不特定多数との接触が忌避される状況が続いたことに配慮し、いずれの地域でも少人数の若者に限定した活動にとどめた。 市民観測においては、自ら取得したデータの解析に加えて、公的機関が公開しているデータの活用も重要な柱となる。新型コロナウィルス感染症の拡大により地震計データは地域の社会活動度を評価できることが注目されたことから、地震計データから地域特性を評価する教育プログラムの試作も行った。
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