多様な人々との協働がますます重要となる現代においては,自分の考えを的確に相手に伝えるための「表現力の育成」が特に重要である。そこで表現の良いところ,悪いところを学習者自身が深く省察し,実効性のあるPDCAサイクルを回すことができる学習プログラムを立案した。具体的には,科学コミュニケーションゲーム(ブロックや文具などで作成された構造物を文章のみで表現し,別の人がその記述を読み解き構造物の再現を行うゲーム)に効果的に省察を行わせる場面を取り入れ,生徒が楽しみながら取り組める内容とした。 まず,大学生を対象として予備調査を繰り返し行って,課題とする構造物の難易度,ゲームの時間配分,省察の方法,ゲームの評価方法などを検討した。これらの検討結果を踏まえ高校1年生約120名を対象として,本ゲームの有効性を検証した。ゲームにおいて生徒は,与えられた構造物の文章による表現と再現を行った後,表現者と再現者が表現の良かった点,改善すべき点を十分な時間をかけて話し合った。その後一回目とは全く異なる構造物を対象として表現と再現を行った。一回目と二回目ではどちらが正確に構造物の再現が行われたか,生徒の投票によって決定した。その結果,生徒同士の省察が表現力の育成に活かされていることがわかった。また生徒に対する質問紙調査から,他者と協働することで自分にはなかったよりよい表現方法があることに気づいたこと,そしてこのゲームが科学的な表現力の育成に効果があることを実感しながら楽しく取り組んでいたことがみてとれた。
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