高校や大学で利用できる光電効果実験教材の開発を目的に、我々が独自に提案している放電ランプを用いた仕事関数測定法の実用化を狙っている。R4年度は従来までの我々の研究手法とは異なり、市販のランプ、すなわちバッファガス(Ne)が封入されたランプを用いて、放電した状態での測定を行った。市販の製品を使用して仕事関数を測定できることが示されれば、我々の仕事関数測定法の汎用性を主張でき、技術的メリットを強くアピールできる。測定対象とした元素はセシウム(Cs)とユウロピウム(Eu)である。Csは最も仕事関数の小さな元素であり、EuはCsの属するのとは異なる族に属する元素だからである。また、バッファガスの封入されていない(放電しない)ランプを用いた仕事関数測定を既に実施済でもあり、そのときの測定値と今回の結果を比較検討することができる。 実験ではハロゲンランプからの出力光をバンドパスフィルターに通して単色化し、ランプ陰極へ照射した。ランプに印加する電圧は100Vから600Vまで、100V刻みで変えた。印加電圧100Vでは放電しないが、バッファガスがランプに封入されているので200V以上では放電した状態であった。単色光の波長を420nmから650nmまで変化させ、光の照射によって生じたランプ電極間のインピーダンス変化をロックイン増幅器で検出した。 実験の結果、すべての印加電圧でCs、Euとも光電子分光法で測定された仕事関数と一致した。また、バッファガスが封入されていない放電ランプを用いたときの仕事関数とも、誤差の範囲で一致した。光電効果信号強度の波長依存性も、量子効率を勘案したモデルとよく一致していた。Cs、Euに関しては、我々の提案する方法で仕事関数の測定が可能であるとの結論を得た。
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