研究課題/領域番号 |
19K03146
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
大橋 淳史 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (50407136)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 化学教育 / くすり教育 / 小学校 / 初等教育 |
研究実績の概要 |
簡易錠剤成形機として、一般に流通している格安の錠剤成形機、ボタン止め用プレス機(2種類)を購入し、粉砂糖とコーンスターチから作る、錠剤型ラムネと、重曹と片栗粉から作る、発砲入浴剤の成形を検討した。手で固めたもの、簡易錠剤成形機で固めたものを成形し、水に投入した際の溶解速度を検討した。その結果、手で固めたものに対して、プレスしたもの、錠剤成形機は、溶解速度が有意に遅くなった。これらの結果から、薬の崩壊速度は、錠剤の硬度が関係していることを示すことができることを示した。 また、錠剤の硬度を測定するため、自動測定器と手動測定器を購入し、硬度を測定した。手動測定器は、やや使用にコツが必要であり、児童が利用するのは難しいかもしれない。一方、自動測定器は、手動測定器の1.5倍以上の価格であり、高コストであった。いずれの機器も、単体価格が5万円を超え、学校単位での導入は現実的ではない。これらの機器は、基礎データ測定に利用し、学校での実践では、別の形で錠剤の「硬さ」を調べる方法を検討したい。 これらに関連して、子どもの「くすり」に対する意識調査を実施することを検討した。LINEリサーチという、10代の若者がよく利用するLINEを用いた、インターネット聴取法を検討したい。とくに中学校における「くすり教育」の実態に対する知見を得たい。学生を対象にした聴取では、「くすり、ダメゼッタイ」以外の教育を受けておらず、風邪薬にすら漠然とした不安を持っていることが示唆されている。状況に合わせた適正な薬の使用に向けて、どこに課題があるのかを調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
簡易錠剤成形機の入手に予想以上の時間がかかった。高精度だが高価な専用の機器ではなく、多少精度が落ちても、安価で市場で購入可能な装置を選定したが、多くは中国で生産され、輸入商を経由した販売形態であった。まず、輸入に時間がかかり、また、安価であるためか、製品の検品状況が悪く、納入されたが使えずに、返品、再選定という過程を何度か経たため、進捗が遅れている。硬度測定機も同様であり、安価である代わりに納品に数ヶ月を要しており、硬度の測定方法の検証が遅れた。ネット調査に関しては、質問項目の精査に時間を要している。学生から聴取したデータをもとに質問項目を検討しているが、曖昧な回答が多く、質問の精査に時間がかかった。
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今後の研究の推進方策 |
大まかに教材化の方向性は見えたため、教育法について検討し、実践を目指す。 教材化については、現状の機材を用いて試行を繰り返し、教材化のための方針を明確化する。入手した成形機および手作りの錠剤を作成し、硬度と崩壊速度の検討を行い、錠剤に用いる試薬量の明確化が目標である。ラムネは、粉砂糖とコーンスターチが主体であるが、「甘味」を目的とする粉砂糖を減らし、コーンスターチ主体での錠剤を検討する。採択の際のコメントが気になったため、念の為に申し添えるが、ラムネは喫食を目的としていない。飲食に用いることができるものを使うのは、とくに学校教員や保護者に「安全性」が明確であり、「安心」して使用できることを示すためである。科学を専門としない一般市民にとって、安全と安心は別のものであり、安全性が保証されていても、安心できないものを用いないことは、食品保存料などで示されている。とくに、「くすりは危険である」という刷り込みを受けている大人に、安心して利用してもらうためには、かれらにとって身近で理解しやすいものを用いる必要がある。それがラムネに注目している理由である。発泡入浴剤は、重曹は必ずしも必要なく、片栗粉主体で成形を検討する。片栗粉主体の錠剤は、実際に用いられる錠剤と成分が類似しているため、理解が容易になることが期待されるが、片栗粉は水に溶解しないため、その点に課題がある。 また、10代の聴取結果をもとに、初等教育に向けて、どの学年のどういった内容との連携を目指すのかを明確化したい。かれらの受けてきたくすりに関する教育過程と現在のくすりに対するイメージを聴取し、安全で適正なくすりの使用と危険ドラッグの使用との違いを明確化して、安全なくすりの使用について考えるための教育法を検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した機器に不具合が見つかり、販売元に問い合わせた結果、返品になった機器があること、購入を検討したが品切れで購入できなかった機器があることが物品費の変更が生じた理由である。 また、旅費に変動が生じた理由は、新型コロナウィルスによって年が明けたあとの学会などがすべて中止になったことによる。その他経費は、それらの遅延によって、インターネット聴取の算段が遅れたためである。
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