研究課題/領域番号 |
19K03147
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
中村 有吾 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 客員講師 (00466468)
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研究分担者 |
岩井 雅夫 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 教授 (90274357)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 防災体制 / ジオツーリズム / ジオパーク |
研究実績の概要 |
本研究は、ジオパークネットワークを通じて、各地の自然災害の実態と社会の対応を調査し、より効果的な減災の取り組みを明らかにし、防災ツーリズムに立脚したジオパーク活動によって、室戸ユネスコ世界ジオパーク(高知県室戸市)、および、アジア諸地域において市民の防災科学リテラシーを高めることである。2019年度はインドネシア「リンジャニロンボクユネスコ世界ジオパーク」および「島原半島ユネスコ世界ジオパーク」における現地調査を実施した。 インドネシア・ロンボク島では2018年の夏に地震が発生し381名の人的被害があった。リンジャニロンボクジオパーク地域内で発生した災害であり、ジオパークスタッフも対応を行った。現在では、当時の災害の様子をジオサイトやツアー等で紹介するなど、ジオパークにおける防災活動に役立てている。 島原半島ジオパークは、1990~1995年の雲仙普賢岳噴火による火砕流および土石流災害が発生した地域である。そのほかにも、地震、津波、水害を経験しており、将来も予想される。過去の災害はジオパークの主要なテーマとしてとらえられ、災害にかかわるジオサイトを多数認定するとともに、災害現場をめぐるジオツアーが教育やツーリズムに活用されている。また、産・官・民・学が協力して災害の実態を伝え、将来の防災に役立てようとする体制が作られている。2019年度の現地調査では、「室戸市観光ガイドの会」メンバーを同行し、今後、室戸ユネスコ世界ジオパークにおける防災体制構築のための議論をスタートした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度の当初の計画は(1)ジオパークにおける自然災害と社会の対応についての調査 、および、(2)室戸ジオパークにおけるフィールドミュージアム構築のための準備を進めることであった。2019年度は、島原半島ユネスコ世界ジオパークでの、詳細な調査、聞き取り調査を行い、ジオパークにおける災害情報の扱いやツーリズムや教育にかかわる先進的事例を実地に調査することができた。また、室戸ジオパークで活動するガイド組織のメンバーが先進事例に接したことで、今後の防災教育プログラムを作成するうえで協力体制を構築できた。よって、当初の研究計画に対しておおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、ジオパークを利用したフィールドミュージアムの構築を目標とする。昨年度に調査を行った島原半島ジオパークの防災活動および教育体制についてのまとめを行うとともに、さらに地震津波災害や火山災害を経験しているジオパーク(現時点で三陸海岸地域を想定している)において避難所経営等の情報収集をおこなう。さらに、これらのデータにもとづき、室戸ジオパークの防災教育プログラムを、地域住民と協働で(ボトム アップの方法で)構築する。展示や防災ツアー開発など、室戸ジオパークのジオサイトを 「フィールドミュージアム」として活用する社会教育体制を構築する。とくに、社会教育実践のための教材やテキストを、小学生~大人まで対象別に作成する。また、室戸世界ジオパークセンターのラボ(高知大学サテライト教室・ラボ)を地域協働ラボとして再整備する。 また、来年度は国内外のジオパークネットワークを通じた防災科学教育をすすめる。とくに、近い将来地震・津波や火山噴火の発生が予想されている室戸ジオパークや、洞爺湖有珠山ジオパーク、十勝岳ジオパーク(構想地域)、などと協力して、研究成果を伝えるための共同ワークショップを実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は調査機材としてビデオカメラ等の購入を予定していたが、所属研究室に既存のものを利用できることが判明し購入を見送ったため、物品費の一部を繰り越すこととなった。次年度も野外調査を予定しているので、調査に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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