研究課題/領域番号 |
19K03168
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
風間 寛司 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成・院), 准教授 (20736673)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 算額 / 和算 / 数学教育 / 地域教材 / 福井県 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は次の2点である。 ア 福井県における「絵付算額(問題の内容を絵画化したものが付された算額)」を中心とした算額や和算書、写本、新資料の調査・研究を行う。 イ アの結果成果を次期学習指導要領と関連付けた地域教材「福井の算額研究ハンドブック」を開発し、科学教育への援用の可能性について実証的研究を行う。 アについては,これまで福井県郷土数学史家 佐々木英治氏の著作物の検証・整理を進めながら,広く本県に関係する可能性のある和算関係史資料を,県内外において調査・収集を試みた。金沢市立玉川図書館近世史料館蔵の西尾文庫における史資料から,福井県関係者を抜粋し史資料を収集した。西尾家史資料は日本学士院蔵のものも合わせて収集した。西尾文庫からは,「福井藩士 野坂勇左衛門」「大野住 若山栄吉有隣」に関する史資料を新たに収集した。また,福井市の算額の存在を示す史料「福井あたご山算題」を収集した。次に若山の奉納した算額の記録を石川県立図書館蔵の田中文庫から収集した。県内においては,行方不明の算額を探したが,再発見には至らなかった。小浜市教育委員会文化課蔵の古文書に和算書の写本が現存することを確認した。しかし,新たな算額の発見はなかった。また,鯖江市神明社の算額の空白部分の撮影にIRカメラを用いた。 イについては,次年度の計画を前倒し,福井県教育委員会の協力をいただき,鯖江市をフィールドにして,中学校1校,小学校3校の各学区に現存する算額三面を教材化し,出前授業実践を試行した。また,県立高等学校における研究において2グループの生徒が算額の研究を行った際,助言させていただいた。また,別な県立高等学校において,算額一面を教材化し授業実践を試行した。 本年度の研究成果は,本学の講義や福井市中央公民館,本学ジュニアドクター養成塾において,学生,児童・生徒,一般に紹介している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した2つの研究目的に沿って示す。なお,年度末の2ヶ月程度,研究が停滞したことも理由に含めている。 【ア 調査・研究】これまでの進捗状況は,おおむね計画通りに進んでいる。また,その一部は,研究会や学会において発表している。本県の嶺南地区における未調査範囲への依頼については,調整中である。 【イ 科学教育(特に算数・数学教育)への援用】令和2年度の後半を予定していたが,現存する22面のうち,8面の教材化についての検討を行っていること。また,小学校3校,中学校1校,高等学校2校において授業実践を開始していること。児童・生徒,本学の学生,一般の方に向けて,教材の一端を援用してみたこと。
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今後の研究の推進方策 |
今後も,実施可能な範囲で方法を探索しながら,計画に沿って推進していく予定である。調査や今後の学校現場の状況における授業実践において遅れが生じる可能性があるが,第1年次に前倒して実証的に授業実践を試行しており,その分析を進めていくことが可能である。 【ア 調査・研究】平成31年度・令和元年度に収集した史資料の整理・研究と,文献研究を中心に進めていく。未調査範囲へのアンケート調査は郵送などの方法を検討していく。 【イ 科学教育(特に算数・数学教育)への援用】第1年次に実施できた結果を検討しながら,アの基礎研究に基づく教材化を進めていく。また,学校現場の教員にもこれまでに実施してきた内容を示し,オンラインを用いながら協議を進めていく。学校現場の授業実践が,困難な可能性もあるため,各学校の管理職と相談しながら進めていくことになる。遠隔授業の可能性も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大防止の理由で,本研究と関連する2020年2月29日に参加予定だった研究会が中止となり,予定していた旅費46,744円を使用できなくなったため生じた。今後の調査・研究用の旅費に使用する予定であるが,学会等の開催状況によっては,図書,物品の購入に充当する。
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