近年,地球温暖化への懸念などによってエネルギー問題への関心が高まり再生可能エネルギーの1つとして太陽電池は注目されている.筆者らは,半導体製造装置をほとんど備えていなくても,通常の実験室のような環境において製作実習を実施する方法について研究している. 平成元年度から平成2年度までは,太陽電池製作時間の短縮化を目的として,製作工程における不純物拡散溶液の濃度や拡散時間について調べた.その結果,太陽電池の製作からソーラーモータ駆動までを2コマで実施する方法を考案し,学期中の学生実験等への導入が時間的に可能となることがわかった。しかしながら熱拡散時間を短くした場合に太陽電池特性の低下が生じる結果となった. 最終年度の平成3年度は,太陽電池の整流特性および表面の光学顕微鏡像から,太陽電池特性の低下について検討した.Si太陽電池の製作工程において,熱拡散時間のそれぞれ異なる太陽電池を製作したときの太陽電池特性について調べた.拡散時間を短くすると太陽電池特性低下の要因となるリーク電流が増加することが整流特性における逆方向特性から明らかとなった.拡散時間を短くすると合金によって不完全な接合部となる箇所が増えるためリーク電流が増加すると考えられた. 大学等における実験実習は一般に2コマで実施される.限られた時間の中で余裕を持って太陽電池を製作するためには製作時間の短時間化が望まれる.拡散時間の短時間化は実験実習において余裕を持って製作するための重要な要素であり拡散時間の短時間化によって太陽電池特性が低下することを把握しておくことは実験実習における特性評価の際の一助となる.
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