研究課題/領域番号 |
19K03188
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒井 崇史 東北大学, 文学研究科, 准教授 (50626885)
|
研究分担者 |
川上 直秋 筑波大学, 人間系, 准教授 (80633289)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 攻撃行動 / 潜在的測度 / 顕在的測度 / 評価的プライミング / マウストラッカー課題 / 潜在的態度 |
研究実績の概要 |
本研究課題全体の目的は,攻撃スクリプトを測定するために,社会的認知研究の測定手法(評価的プライミング)を応用し,潜在レベルでの攻撃への態度が攻撃行動の発現に及ぼす影響を解明することである。この目的に対して,2021年度は社会的認知研究で用いられるマウストラッカー課題(Freeman et al, 2010)を攻撃に対する潜在的態度を測定するツールとして開発することを目的とした。 2021年度は前年度までに収集した刺激語を用いたデータについて分析等を行った。その結果,分析結果がクリアではなかったことから刺激語の選定過程等を再度精査したところ,刺激として分類がしにくいなど,課題を実施する上で問題があることが明らかとなった。そのため,再度刺激を収集し,刺激語選定に関する予備調査を行った。具体的には,先行研究を見直し,そこから刺激を収集した。収集された刺激語に対して研究目的を知らない複数名の大学院生に翻訳を依頼し,翻訳版を作成した。このようにして複数名によって行われた翻訳版を申請者が重複を除去するなどの整理を行い,第一バージョンの刺激語を作成した。第一バージョンの刺激語に対して,大学生100名程度を対象に各刺激語のわかりやすさ,攻撃的かどうか,ネガティブさの程度について予備調査を行った。そして,それぞれの評定において高い値を示した50語を抽出し,第二バージョンの刺激語とした。この第二バージョンの刺激語に対して,Web調査を通して学生以外の対象者も含めた約6,000名を対象に再度予備調査を実施した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度中の計画は,前年度までに収集した攻撃に関連する文字刺激をプライムとして提示し,その後スクリプト内容として収集したネガティブ反応(例えば,「殴る」)とポジティブ反応(例えば,「助ける」)をコンピューター上でマウスを用いて分類する課題(マウストラッカー課題)を行うことであった。こうした予定のもと,2021年度前半には攻撃に関連する文字刺激の分析を行った。2020年度までは,当初の計画通り,マウストラッカー課題によって攻撃に対する潜在的態度の測定を行い,マウストラッカー課題への反応から攻撃ワードによる評価的プライミングが生じていることは観察されたが,攻撃への潜在的態度が攻撃行動を予測するという結果は得られなかった。この点に関して,測定ツールとしての精緻化を行うために実験並びに実験刺激の見直しや再分析を行ったところ,選定された刺激語が分類において十分に弁別できない可能性が考えられた。そこで再度刺激語の選定をやり直し,かつ大学生だけではなく,大学生以外の対象者を含めたサンプルにて大規模な予備調査を実施し,刺激語としてより妥当なワードを選定した。 当初の計画では,2021年度には刺激語等は完成している予定であったが,以上の実施事項を考えると,研究計画に対してやや遅れていると判断される。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策に関して,2022年度には,マウストラッカー課題を用いて評価的プライミングを用いた攻撃に対する潜在的態度の測定方法を確立する。それと同時に,以下の二つの実験を可能な限り並行して実施する。一つは,マウストラッカー課題の応用版としてタスクスイッチングパラダイムを応用し,測定方法を拡張・洗練する。ただし,タスクスイッチングパラダイムに関しては,測定方法としては手続きがより複雑になり,かつ実験参加者の負担が増えることを考慮して大規模に実施するかどうかは研究全体の進捗を踏まえて慎重に検討する。より重要な点として,二つ目は,マウストラッカー課題による攻撃に対する潜在的態度の測定が将来の攻撃行動を予測し得るかどうか,縦断的な調査を通して明らかにする。縦断的な調査については,マウストラッカー課題の作成研究と同時に実施し,同時並行で研究を推進することを検討する。なお,本研究では,実験者と実験参加者が対面で実験を行う必要があるため,2022年度に関しても前年度までと同様に,社会的情勢を見極め,実験参加者の安全に配慮した上での実施となることを付記する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該使用額が生じた理由の一つは,2020年度までに実施した研究のデータの再解析を行い,刺激語の再検討を行ったことから,刺激語作成の予備調査(Web調査)の時期が当初予定していたよりも遅れ,研究計画全体が後ろ倒しになったことが挙げられる。 使用計画については,2022年度には,前年度から繰り越した費用を当初の予定通りにマウストラッカー課題の作成研究費用として執行する。その上で,4年目の予算については,実験の実施や統計解析に必要な消耗品の費用等として,予定通りに執行する。
|