本研究は、人々が相互作用を通じて暗黙の規範や共有信念を形成・維持していく過程について、マクロな社会環境要因に着目して明らかにすることを目的として行われた。第一に、災害避難や感染予防行動等に関する規範を題材として、社会環境要因としての人的流動性が評判低下懸念と規範遵守行動に及ぼす効果を検証した。第二に、共有信念としての暗黙理論(能力観)に着目し、指導者から学習者への影響過程を検討した。さらに、暗黙理論が、課題の選択肢の豊富さ、課題を変更することの容易さといった教育学習環境要因と、環境に応じた他者からの期待の認知・推測を反映して育まれる可能性について、学校教育場面を扱った調査によって検討した。
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