研究課題/領域番号 |
19K03192
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
三沢 良 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (90570820)
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研究分担者 |
藤村 まこと 福岡女学院大学, 人間関係学部, 准教授 (10404039)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多職種協働 / 認知社会ネットワーク / チームワーク / 学校組織 / 医療組織 |
研究実績の概要 |
本研究では,多職種チームでの効果的な協働の基盤となるメンバー間の関係(ネットワーク構造)とその特徴を明らかにすることを目的とする。具体的な研究項目は以下の3点である。1.多職種チームにおいて各職種の認識する協働の必要性と実態をネットワーク構造として解明する。あわせて,職種間でどのような認識の差異があるのかを明らかにする。2.多職種チームの協働関係にみられる特徴(ネットワークの構造的特徴)が,チームの効果性とどのような関係にあるのかを明らかにする。3.多職種チームにおける効果的な協働を実現する条件について,得られた知見を基に理論的に整理する。3カ年計画の初年度にあたる令和元年度は,以下の研究を行った。 1.学校組織における協働の実態把握 学校組織における多職種チームの構成員となる管理職や教職員へのヒアリングを進めるとともに,公立学校で行われている多職種連携・協働に関する情報収集を行った。また,「チーム学校」体制の前提となる教員集団が抱く協働の認識の実像を明確にするため,予備調査段階から収集してきたチームワークと学校組織風土の調査データを解析し,その構成要素を抽出した。 2.多職種チームにおける協働の理論的枠組みの検討 欧米を中心に,協働関係をネットワークでとらえるチームワークや分散型リーダーシップの研究について文献調査を進め,既往知見を整理した。また,医療現場の多職種連携教育,学校現場で重視される専門職の学習共同体に関する知見を参考にしつつ,本研究で直接的に取り上げる協働の職務遂行文脈を明確にする理論的枠組みの構築を進めている。今後,他の職種を含む協働,および医療組織における多職種協働を吟味・分析するための足がかりとなる知見が得られた。 上記の成果について,順次,教育・心理分野の学会等で報告及び論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多職種チームの協働に関する実態調査と文献研究は着実に進んでおり,基礎的なデータも得られつつあるが,現段階では,本研究で着目する協働のネットワーク構造の特徴を吟味するための明確な理論的枠組みを構築するには至っていない。これは学校組織及び医療組織における協働の体制とその認識のあり方が多様であり,実務においても未だ模索されていることによるものである。Web調査で実証データを得て精査する計画であったが,年度末まで実施が遅れてしまい,さらにCOVID-19の影響を鑑みて調査の実施時期を延期することにした。以上のことから,本研究の進捗状況は「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本報告書作成時点(2020年5月)においてCOVID-19に係る緊急事態宣言が解除されたものの,本研究の対象である学校組織および医療組織が平常化するには相応の時間を要することが予想される。特に,医療組織については当分の間,調査協力を得るのは困難と考えられるため,令和2年度は学校組織を対象に,上記記載の延期分を含め,当初予定よりも規模を拡大したWeb調査を実施することにしたい。当然ながら学校現場についても状況を注視することが必要であるが,オンラインミーティングのツールを活用したヒアリングと研究協力関係の拡充を進め,前年に実施した文献調査をもとに理論的基盤の構築,およびその成果の発表(学会等の報告は開催中止等もあるため論文発表主体とする)を加速して実施していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、令和元年度に計画していたWeb調査の実施を延期したため,予算に未使用額が生じた。繰越し分の研究費は,Web調査の実施準備と調査費用,およびデータ解析用ソフト等の購入に充当して使用する。
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