研究課題/領域番号 |
19K03194
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研究機関 | 北星学園大学 |
研究代表者 |
眞嶋 良全 北星学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50344536)
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研究分担者 |
中村 紘子 東京電機大学, 理工学部, 研究員 (30521976)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 社会系心理学 / 実験系心理学 / フェイクニュース / 陰謀論 / 二重過程 |
研究実績の概要 |
本年度は,主として矛盾する陰謀論を同時に信じるという,陰謀論者にしばしば見られる傾向について,その背景要因の検討を行った。Wood et al. (2012) では,核となる陰謀論(政府は情報を隠蔽する)の影響を統制すると,矛盾する陰謀論間の相関関係は消失することが示されているが,著者らは,日本人参加者においては核となる陰謀論の影響を統制しても,矛盾する陰謀論同士で正の相関が残ることを明らかにした(眞嶋他, 2021)。この結果について,更なる検討を行い,矛盾する陰謀論の同時信奉に対して分析的思考は負の,直感的思考は正の影響を与えており,分析的に思考する個人は矛盾する陰謀論を同時には信じないこと,直感的思考者は同時に信奉する傾向があることが明らかとなった。また,コロナウィルス感染下における各種のワクチン接種意図の規定因に関する研究を行い,Covid-19 ワクチンに対しては陰謀論が影響するが,その他のワクチン接種(インフルエンザ,HPV)に対しては陰謀論は影響しないこと,HPV 以外では国家や専門家に対する信頼も重要な役割を果たすことが明らかとなった。
また,5項目からなる陰謀論的心性尺度 (Conspiracy Mentality Questionnaire, CMQ; Bruder et al., 2013)の日本語版の整備を継続して行った。本尺度は原著では1因子構造であったが,本研究の結果では相互に強く相関するものの2因子構造を持つことが明らかとなった。しかしながら,因子構造の違いの文化差の問題はあるものの,実用上は単因子構造を持つものとして扱うことができるものと考えられ,現在はこの成果を学術論文として公表することを目指して準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
フェイクニュースの最小反直観性,伝達可能性の検討については,予備的な検討を行ったものの,想定していたような結果が得られていない。また,新型コロナウィルス感染症に起因した研究計画の遅延は,本務校での業務量がさらに増えたことも相まって,計画通りに進行していない。また,感染状況は比較的落ち着いてきたとはいえ,まだまだ対面での研究の実施には制約があったため,当初予定していた実験を行えないでいる。 また,当初予定していた国内外の学会等における研究発表も,一部はまだ非対面のままで行われたため,予算の執行が計画通りには進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症は,まだ完全に収束してはいないものの,各種の制約は緩和されつつある。 しかしながら,残りの一年間で,実施に時間のかかる対面実験を行い,成果をまとめることは困難であるため,これまでの研究過程で明らかとなった信念維持の文化差,特に矛盾する陰謀論の処理について最終的な検討を行い,成果報告を行うこととしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
オンライン調査の一部を年度内に実施することができなたかったため,その費用として使用する。
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