研究課題/領域番号 |
19K03197
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
高岸 治人 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (90709370)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 思春期 / 向社会行動 / 経済ゲーム / 脳構造 / 関係流動性 / VBM |
研究実績の概要 |
2021年度も新型コロナウイルス感染症の対応のため予定されていた実験を実施することができなかった。そのため、これまで収集してきたデータの分析、および得られた結果の論文化を行なった。本研究の目的である、社会的環境と向社会性の関連について、社会的価値志向性においてproselfに分類された子どもよりもprosocialに分類された子どもの方が学校適応感における被信頼感や受容感が高く、居心地の良さが高く、教師との関係も良く、また実際の親友の数も多いことが明らかになった。一方で、母親や父親との関係性については社会的価値志向性との関連は見られなかった。他者と安定した関係が形成できている子どもはprosocial傾向が高いという結果は、本研究の仮説を支持しているが、横断データによる相関研究のため因果関係は現時点では不明である。今後は縦断データをとることで個人内における対人関係の変化が社会的価値観に与える影響について検討する。また複数の経済ゲーム(囚人のジレンマゲーム、独裁者ゲーム、公共財ゲーム、信頼ゲーム)の指標と脳の灰白質体積の関連をvoxel-based morphometryにて調べたところ、向社会行動の程度が高い子どもほど右背外側前頭前野の体積が大きいことが明らかになった。さらに対人関係形成や離脱の自由度である関係流動性が子どもの社会性に与える影響について、関係流動性が低い環境で暮らす子どもほど左上側頭回の灰白質体積が大きく社会的な用心傾向が高いこと、また関係流動性と用心傾向の関連を左上側頭回の灰白質体積が媒介することが明らかになった。これらの結果は、論文として投稿され、現在改稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の対応のため2021年に予定していた思春期世代を対象とした行動実験が中止となった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は実験が実施できるようになり次第、実験を実施することで目標数のデータを収集していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により予定していた実験を実施することができなかっため。2022年度は実験を再開することが出来次第、速やかに思春期世代における向社会行動のデータの収集を行う予定である。次年度使用額については行動実験に伴う参加者への謝礼に用いる。
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