2022年度は秋以降に子どもを対象とした実験を実施することが出来るようになったため、2022年12月から2023年2月までの間に思春期世代の子どもを対象とした実験を行い、向社会性のデータの収集を行った。主に2019年度に実験に参加した子どもを対象にリクルートを行い、27名の縦断データ、8名の横断データを収集した。現在は、縦断データを用いて思春期世代の子どもの向社会性の発達がどのような社会環境要因の影響を受けているのか明らかにする分析を行なっているところである。またこれまで収集してきたデータを分析することで、思春期世代の子どもにおける新規他者との関係形成の多寡である関係流動性が子どもの用心深さと関連すること、そして左上側頭回の灰白質体積が関係流動性と用心深さの間を媒介する効果を持つことを明らかにし、その結果を国際誌に発表した。また、データ駆動型の解析である多重正則化正準相関分析(msCCA)を用いてこれまで収集した向社会行動に関するすべてのデータ(独裁者ゲーム、囚人のジレンマゲーム、公共財ゲーム、信頼ゲーム、最後通牒ゲーム)、脳構造データ(髄鞘密度、皮質下体積、皮質厚)、および脳機能データ(半球間機能相関、グラフ理論に基づいた安静時機能結合の5つの指標)を分析し、思春期世代の子どもが示す向社会行動を支える脳構造として前頭前野内側部・外側部における髄鞘密度が関与することを明らかにした。現在は、msCCAの結果を論文として投稿するために準備しているところである。
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