研究課題/領域番号 |
19K03198
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
堀毛 一也 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (10141037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ウェル・ビーイング / 社会的状況 / 人間-状況論争 / 社会的認知 / ポジティブな状況体験 / 状況認知尺度 / 場面と関係性 / web調査 |
研究実績の概要 |
本年度は4年間の研究の2年目であり、状況研究の進展に関する展望論文、およびwell-beingと社会的認知の関連に関する展望論文の出版、また、昨年度末に行った調査研究のまとめと学会発表、第2回の調査研究を行った。具体的には、まず、「人間-状況論争は続いている」と題した論文において、本研究の主要なテーマの一つである人間―状況論争の経緯や、状況認知研究の最近の進展について、欧米の研究成果をもとに知見をまとめ考察を行った(著書1)。また、「ウェル・ビーイングと社会的認知」を表題に、本研究のもうひとつのテーマであるウェル・ビーイングの判断過程について、社会的認知研究との関連を中心に論考をまとめた(著書2)。さらに、2つの学会で、「ポジティブな状況に関する研究」として、前年の調査結果に関する発表を行った(学会発表1・2)。発表(1)では場面評定結果、発表(2)では関係評定結果を中心に分析を行い、1)制約なしに選択された状況のほぼ6割がポジティブな状況と認識されていること、2)体験された状況のポジティビティが多面的なウェル・ビーイングの予測因として機能する可能性があること、3)場面・関係分類枠はほぼ妥当な状況分類枠組みとして機能すること、4)DIAMONDSやCAPTIONなどの状況認知尺度は本邦の研究でも妥当であり、状況研究の基盤として利用できること、などを明らかにした。 加えて、令和3年3月に、第2回の調査研究を実施した。コロナの流行により、ポジティブな状況体験が減少している危惧はあったが、そのなかで「ポジティブな状況体験」を尋ね、前年の調査と同様に、その内容の分類カテゴリや状況認知について回答を求めたうえで、本人のパーソナリティとの関連をチェックするため、ビッグ・ファイブや強み尺度により個人的資質を尋ねた。これらの関連については現在解析中であり、次年度の学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体に計画はほぼ順調に達成されていると判断する。4つの研究目的のうち、1)ポジティブな状況とはどのようなものか、2)そのような状況は認知的にどのように解釈されているか、については、初年度および2年度の調査結果を元に、総合的に検討を行える。目的の3)「個人の強みと状況解釈・状況選択の相互作用の様相を明らかにする」については、2年度の調査から検討が可能である。ただし、結果がコロナの流行の影響を受けている可能性が高いので、考察は慎重に進める。必要に応じて、3年度末に遂行予定の調査に検証となる項目を再度組み込む予定である。第4の目的である「人と状況とのマッチングがウェル・ビーイングの増進につながるか」という課題についても3年度末の調査の中で検討を進める。購入が遅れている新しいPCを本年度の早期に入手し、データ解析に支障がでないよう留意する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の進展にはやや不安が残る。コロナの流行により、参加を予定していた国際・国内学会がオンライン開催になっており、研究成果に対するフィードバックを得にくくなる可能性がある。対応として、早期の論文化や研究者間のテレワークなどによりフィードバックや評価を得られるよう努力する。年度末の調査は、状況によっては、次年度のコロナの流行が終息した後の時点に延期し、知見を確実なものにしていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの流行により、海外学会がすべて中止となり、旅費としての申請分が使えなかった。また予定していたPCの購入がスムースにいかず、その分も次年度に使用することとした。 本年度は、年度当初に予定していた物品(PC)を購入し、データ処理の円滑化を図るとともに、7月にハイブリッド形式で開催が予定されている国際心理学会(プラハ)に参加する。また年度末には、第3回の調査研究を予定しているが、コロナの終息時期によっては最終年度に延期することも考えている。
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