研究課題/領域番号 |
19K03198
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
堀毛 一也 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (10141037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポジティブ心理学 / ウェル・ビーイング / 社会的状況 / 状況認知尺度 / ポジティブな状況体験 / 強み / web調査 / 階層的重回帰分析 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度末までに行った2回の調査結果の解析を中心に、2つの国際学会、および3つの国内学会(いずれもオンライン)で発表を行った。まず、2021年7月中旬に開催された第7回WCPPでは、A study on the positive situationという表題のもと、初年度末の調査による場面評定や関係評定の結果について、CAPTIONやDIAMONDSなどの状況評定尺度との関連も含めて報告を行った。また、同じく7月末に開催されたAASP Conferenceでも、Some characteristics of positive situationという表題のもと、行動評定に関する結果も含め、初年度末の調査の総合的なデータ解析報告を行った。行動評定の結果については、8月に開催された日本社会心理学会大会でも詳細に報告した。これらの発表を通じた初年度調査の結論として、1)人は日常生活の中で、ポジティブな体験を想起し記憶している傾向がある、2)想起された状況のポジティビティは、個人の一般的なウェル・ビーイングや、領域的ウェル・ビーイングと有意な関連をもつ、3)場面、関係性、行為の3側面から状況を捉える枠組が確立でき、これにより「状況」の特徴をほぼ理解することができる、4)ポジティブ心理学にとって「状況」変数を取り入れた研究は意味があり、今後の発展も期待できる、などのことを明らかにした。フロアとの論議の中でも有用な研究との評価をいただいた。 引き続き昨年度末に行った第2回調査の解析を中心に、9月に開催された日本心理学会およびパーソナリティ心理学会で、強みと状況認知を用いたウェル・ビーイングの予測について報告した。結果として、全般的ウェル・ビーイングの予測については強み因子の予測力が高いが、個別のウェル・ビーイングの予測に関しては状況認知変数が高い予測力を持つことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでのところ、研究の進捗はほぼ順調に推移し、概要で論じたように、興味深い知見も得られている。目的の1)ポジティブな状況の特徴や、2)その認知的解釈については、すでに著作や学会発表等で報告している。目的の3)個人の「強み」と「状況解釈」の相互作用についても有用なデータを得ており、成果の一部は学会で報告している。第4の目的である、人と状況とのマッチングがウェル・ビーイングの増進につながるか、に関しては、昨年度末に調査を行う予定であったが、COVID-19の流行が収まらず、「ポジティブ」な状況を対象とする調査を行う時期としてはふさわしくないと判断し、調査を延期した。
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今後の研究の推進方策 |
今後のコロナの流行の推移にもよるが、本年8月をめどにマッチングに関する調査を行い、結論を得たいと考えている。まずは本年6月開催予定のEuropean Conference on Positive Psychology において、「強み」と「状況解釈」の相互作用に関する総合的な知見について報告を行う予定である。そこでの論議もふまえ、8月に人と状況のマッチングに関する調査を行い、研究の最終年度として全体的な考察を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度も、コロナの流行により、海外学会がすべてオンラインとなり、旅費としての申請分が使えなかった。6月末にハイブリッド形式で開催が予定されているヨーロッパポジティブ心理学会(レイキャビク)に参加する予定である。また8月には、第3回の調査研究を予定している。最終年度なので、なんとか実施できるよう工夫する予定だが、流行の状況によっては研究時期を延長することも検討する。
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