本年度は最終年度として、これまでに行った調査のデータ解析を中心に、国際学会1つ、国内学会3つで発表を行った。まず、2021年6月下旬に開催された第10回European Congress on Positive Psychologyでは、複数の状況的ウェル・ビーイングの予測に、CAPTIONなどの状況評定尺度が有効であること、一方でグローバルなウェル・ビーイングの予測には、強みが有効であるという報告を行った(学会発表1)。また、日本社会心理学会(9月)、日本心理学会(9月)、日本パーソナリティ心理学会(11月)では、強み・Big Five・状況認知を用いたウェル・ビーイングの予測について報告を行った(学会発表2・3・4)。これらの発表を通じた3年にわたる調査の結論として、1)想起された状況のポジティビティは、個人の一般的なウェル・ビーイングや、感情的、意味的、関係的、活動的、文化的な領域的ウェル・ビーイングと有意な関連をもつこと、2)幸福感やSWLSの説明因としては強みの有効性が高いこと、3)領域的WBの説明因としては状況認知因子の有効性が高いこと、4)Big Fiveによる予測性は、全般に強みや状況認知による予測性よりも弱いこと、5)ポジティブ心理学にとって、「状況」変数を取り入れた研究は意味があり、今後の発展も期待できること、などを明らかにした。フロアとの論議の中でも有用な研究との評価をいただいた。 引き続き2月に、領域的ウェル・ビーイング経験について、マッチングの高低による幸福感の上昇・低下や、状況認知および強みやウェル・ビーイング認知との関連を検討する調査を行った。この成果については現在解析中であり、本年度の複数の国内学会で報告する予定である。
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