研究課題/領域番号 |
19K03207
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
天野 陽一 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (90571886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 婚活 / 配偶者選択 / 社会的情報 / mate-choice copying / 進化心理学 |
研究実績の概要 |
2021 年度は,前年度までの研究成果をもとに,婚活での配偶者選択において社会的情報が利用されるプロセスについて詳しく検討を行った。マッチングアプリや婚活サイトのプロフィール情報に含まれる「いいね!」といった異性からの評価をあらわす情報が,長期的または短期的関係のパートナーとしての評価にどのような影響を及ぼしているのかを明らかにするための Web 実験を行った。社会経済的地位(職業・年収等)や身体的魅力といった,一般的にプロフィールに掲載されており,配偶者としての魅力に大きく影響することが知られている要因と比較しながら,婚活の配偶者選択の意思決定プロセスにおける社会的情報の影響力の強さや利用される優先順位について検討した。 インターネット調査会社に委託し,25 ~ 34 歳の未婚女性 800 名を対象とした Web 実験を行った。マッチングアプリの画面を模した形で男性刺激人物のプロフィールを呈示し,パートナーとしての望ましさの評定を求めた。プロフィールに掲載する項目は一般的な婚活プロフィールの項目を参考に選定し,それぞれの項目の記述内容は先行研究および前年度までの研究成果を踏まえて作成した。独立変数として「いいね!」の獲得数を変えることで異性からの評価(社会的情報)を操作した。また,顔写真を変えることで身体的魅力を操作し,年収の情報を変えることで社会経済的地位を操作した。従属変数としては,結婚相手(長期配偶のパートナー)としての望ましさと,比較として一夜限りの相手(短期配偶のパートナー)としての望ましさについても回答を求めた。プロフィールに含まれる項目の優先順位についても尋ねた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの取り組みにより,婚活の段階ごとの異性に対して求める条件およびその要求水準に及ぼす要因の検討については概ね達成できた。2021 年度は,個別実験により社会的情報にもとづく配偶者選択の意思決定プロセスを詳しく検討する予定であったが,新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により,計画の変更を余儀なくされた。データ収集方法を Web 実験に変更したことにより,実験刺激として使用する婚活プロフィールの作成に想定以上の時間がかかり,委託先のインターネット調査会社との調整にも時間を要したものの,おおよそ予定していた通りのデータを収集することができた。しかしながら,当初計画で最終年度に取り組む予定であった社会的情報の種類や伝達方法の違いによる影響についての検討には着手することができなかったため,研究期間の延長を申請し,次年度に改めて取り組むことにした。
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今後の研究の推進方策 |
社会的情報にもとづく配偶者選択の意思決定プロセスのモデルを精緻化するため,刺激の呈示方法を変えた実験を行うことで,社会的情報の種類および伝達方法の違いによる影響について検討する。次年度も引き続き対面での個別実験は実施困難である可能性があるため,当初の研究計画を変更し,場面想定法を用いた Web 実験として実施する。婚活パーティーの場面を想起させ,他の女性参加者からのフリートークの申し込み数や会話場面での様子の情報によって,男性に対する結婚相手としての望ましさの評価に影響が見られるかを検討する。男性の配偶者としての魅力が,他の女性参加者から好意を向けられているという情報によって高められるのか,他の女性参加者から関心を持たれていないという情報によって低められるのかについて検討する。データを収集する作業と平行して,収集済みのデータについては学会発表および論文執筆を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により,当初予定していた対面での個別実験を中止せざるを得なくなり,研究に遅延が発生したため。また,研究成果を発表予定であった学会等がオンライン開催となり,旅費を支出する必要がなくなったため。Web 実験の実施費用に充てる予定である。
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