研究課題/領域番号 |
19K03207
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
天野 陽一 東京都立大学, 人文科学研究科, 助教 (90571886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 婚活 / 配偶者選択 / 社会的情報 / mate-choice copying / 進化心理学 |
研究実績の概要 |
本研究は,婚活という現代社会に特有の配偶者選択に焦点を当て,異性を結婚相手として評価する際に「可視化された他者からの評価」がどのような影響を及ぼすのかについて明らかにすることである。昨年度までは,マッチングアプリを利用した婚活場面を対象として,異性からの人気をあらわす「いいね!」といった社会的情報が配偶者選択の意思決定においてどのように利用されているのかを検討してきた。 2022 年度は,これまでとは異なる婚活場面として婚活パーティーを取り上げ,社会的情報にもとづいた配偶者選択の意思決定モデルの精緻化に取り組んだ。新型コロナウィルス感染症の影響により対面での実験がいまだ難しい状況であったため,場面想定法を用いた Web 実験を実施する方向で進めた。場面想定法のシナリオを作成するにあたり,まずは実際の婚活パーティーがどのような形式で行われているのかを調査し,婚活パーティーにおける配偶者選択で利用可能な社会的情報としてどのようなものがあるのかについて検討を行った。その結果,婚活パーティーはお見合い形式と立食パーティー形式の 2 種類に大きく分けることができ,フリートークタイムや連絡先交換タイムがあり他の参加者の態度や行動が可視化されやすい後者の方が実験場面んとしては適していることが見いだされた。先行研究で扱われている状況も考慮し,他の女性参加者からのフリートークの申し込み数や会話場面でのポジティブ・ネガティブな相互作用の様子によって男性に対する結婚相手としての望ましさの評価に影響が見られるかを検討することが妥当であるとの判断に至った。 Web 実験の準備を進める一方で,婚活状況における意思決定の特徴という観点から配偶者選択に関する先行研究の知見をまとめ,レビュー論文を執筆した。現在,印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
前年度までの取り組みにより,マッチングアプリを利用した婚活に関しては,配偶者選択における社会的情報の利用について明らかにするという目的は概ね達成することができた。2022 年度は社会的情報の種類および伝達方法の違いによる影響について検討する予定であったが,新型コロナウイルス感染症の影響により実験室での対面実験から場面想定法を用いた Web 実験に切り替えざるを得なかった。場面想定法で用いるシナリオの準備に想定以上の時間がかかってしまい,年度内に実験を実施するまでには至らなかった。しかし,実験の実施はできなかったものの,Web 等で収集した婚活パーティーの体験談・事例の分析にもとづいて複数のシナリオ案が作成できているため,予備調査を行ってシナリオの調整と選定が完了すれば本実験を実施することが可能な段階にはなっている。委託先のインターネット調査会社との調整にもある程度の時間が必要であるため,研究期間の延長を申請して次年度に取り組むことにした。
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今後の研究の推進方策 |
婚活パーティーの場面を取り上げた場面想定法による Web 実験を行い,社会的情報の種類および伝達方法の違いによる影響について検討する。他の女性参加者からのフリートークの申し込み数や会話場面での相互作用の様子に関する情報を操作し,男性に対する結婚相手としての望ましさの評価に影響が見られるかを検討する。男性の配偶者としての魅力が,他の女性参加者から好意を向けられているという情報によって高められるのか,他の女性参加者から関心を持たれていないという情報によって低められるのかについて検討する。これまでに検討してきたマッチングアプリによる配偶者選択の結果と比較することで,社会的情報にもとづく配偶者選択の意思決定プロセスのモデルの精緻化を目指す。また,データを収集する作業と平行して,収集済みのデータについては学会発表および論文執筆を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響により,当初予定していた実験室での個別実験を中止せざるを得なくなったため。研究計画の大幅な変更を余儀なくされ,研究に遅延が発生したことによる。また,研究成果を発表予定であった学会がリモート開催となったり,対面で参加することが難しい状況であったりしたことで,旅費を支出する必要がなくなったため。Web 実験の実施費用に充てる予定である。
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