「理由は多いほどよい」という考えは,社会通念としても学術研究においても受けいれられてきた。しかし,この考えは実際のところ十分な実証的検証を受けてこなかった。誤った前提のもと,複数の理由を呈示するコミュニケーションが実践されると思わぬ反作用が生じる危険があろう。本研究は,(1)複数の理由が利用できるとき,単独の場合より,決定と選択が控えやすくなりうること,また,(2)複数の原理によって立つ行動介入が現実的に機能しないことがあること,を確認した。「理由のブレンド」という視点を切り口に,行為と理由を結ぶ関数関係を実証的に見直すことで,社会行動の理解と予測の範囲を広げることに貢献したといえる。
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