研究実績の概要 |
日本心理学会第85回大会(2021年9月オンライン開催)において「回答モニターはWeb調査と紙面調査では回答行動を変えるのか」を発表した。本研究では同一項目に対する2,000名のWeb調査データと515名の紙面調査データを比較して、調査会社に所属する回答モニターが示す反応バイアスの発生頻度が調査ツールによって異なるのかを検証した。反応バイアスを数量化にはWeijters et al.(2008)の因子モデル(RIRSMACS)を用いた。分析の結果、Web調査データでは5件法で3を回答する中間反応バイアス(MRS)が顕著だったのに対して、紙面調査データでは1や5を好意的に選ぶ極端反応傾向(ERS)だった。一方Web調査と紙面調査での反応バイアスの因子得点の差を検討すると、紙面調査はWeb調査と比較して4や5を選択する黙従反応傾向(ARS)とERSが有意に高く(それぞれz=19.42, p<.001、z=3.35, p<.001)、MRSは有意に低かった(z=-15.23, p<.001)。 調査結果をまとめると、1.紙面調査においても、3種の反応バイアスは実質的に存在する、2.Web調査と比較すると、全体的にその影響力は減じており、また顕在化する反応バイアスの種類にも若干の違いがある、3.A社(Web調査)とB社(紙面調査)に所属する回答モニターが同じような参加動機や回答特性を有しているという前提に立てば、反応バイアスの強度および種類の差は回答ツール(紙面 vs. Web)の特性によってもたらされた可能性が高い、の3点が結論づけられる。
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