研究課題/領域番号 |
19K03212
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
大森 哲至 帝京大学, 外国語学部, 准教授 (50720041)
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研究分担者 |
田宮 憲 帝京大学短期大学, その他部局等, 講師 (70388479)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自然災害 / 精神健康 / 被災者支援 |
研究実績の概要 |
①わが国における被災者の精神健康と支援対策に関する研究を概観するとそのほとんどが阪神淡路大震災に代表されるような一過性の災害の被災者を対象としたものである。しかし自然災害の類型を概観し、その自然災害が一過性のものか、継続性のものかという視点から見ると自然災害のなかには災害の被害が長期にわたって継続するような場合もある。その代表的な事例が2000年三宅島噴火である。従来、継続する自然災害下で生活する被災者の精神健康状態や生活再建プロセスおよび支援対策に関する研究は世界的にも少ない。本研究では継続する自然災害下で生活する2000年三宅島噴火の被災者を対象とし、被災者の精神健康状態や生活再建プロセス、支援対策の問題に焦点をあて、包括的に継続する自然災害下の被災者の災害からの回復プロセスについて解明することを目的とする。本研究の目的を達成するため、2020年度は本調査の実施と分析作業などを行った。具体的には下記の通りである。 ②研究計画書では2020年度9月に個別調査法により本調査を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルスにより個別調査法による本調査実施は困難だと判断した。本研究の目的を果たすために個別調査法から郵送調査法に変更した。郵送調査は2020年10月下旬から12月初旬にかけて東京都三宅村に居住する20歳以上の住民を対象に「2000年三宅島噴火から20年後の生活状況と精神健康に関するアンケート」を行った。配布数は406枚、回収数148枚であった。 ③郵送調査で回収した結果についてデータの整理と分析作業を行った。 ④本研究の目的の1つは、継続する自然災害下の被災者への効果的な支援対策を提言することである。この問題を検討するため、研究協力者の帝京大学大下茂教授の協力を賜り、これまでの研究をまとめた成果物として「三宅島観光白書:三宅島学」を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 本研究の1つ目の目的は継続する自然災害下で生活する2000年三宅島噴火の被災者を対象とし、被災者の精神健康状態の解明や生活再建プロセスに焦点をあて、被災者が継続する自然災害下でどのような悩みや生活再建の問題に直面しているのかについて解明することである。その目的の遂行について、本年度は想定していなかった新型コロナウイルスの影響により応募計画書で示した研究計画を大幅に変更することを余儀なくされたものの、研究目的を達成するために本調査を実施し、それら結果について分析まで終えることができた。 2. 本研究の2つ目の目的は、継続する自然災害下で生活する2000年三宅島噴火の被災者の噴火から20年後の精神健康状態を把握するだけでなく、被災者の精神健康の回復を促進させるための支援策を提言することである。本目的について、本年度は研究協力者である帝京大学大下教授や東京都三宅村役場、東京都三宅支庁、三宅島観光協会などの協力を賜り「三宅島観光白書:三宅島学」としてまとめ、東京都三宅村住民に対して本研究成果のフィードバックを行うことができた。 3.本研究の3つ目の目的は、継続する自然災害下における生活再建プロセス(経済的側面)の困難さについて、2000年三宅島噴火の被災者を対象に面接調査を用いて明らかにすることである。本研究の本年度の研究計画において唯一果たすことができなかったのが本目的である。本目的の実施については2020年9月まで何度も研究分担者と協議したが、新型コロナウイルスの感染が収束しない状況を鑑みて本目的の中止を決定した。 以上のように新型コロナウイルスの影響により予定していた研究計画の変更を余儀なくされたものの、研究の進捗については応募計画書で計画した通りにおおむね進捗させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2021年度における主要な研究計画は、本調査の結果を整理・分析し、学術論文および最終報告書にまとめることである。しかしながら現状の問題点として郵送調査における回収率が低い状況であり、サンプル数が当初の予定を達成していない。したがってその問題点を改善するために、3月に再度三宅島を訪問し、個別調査法を用いてサンプル数を増やしたいと考えている。そのため来年度はサンプル数を増やした上で再度データの分析を行い、分析結果を踏まえ学術論文および最終報告書にまとめたいと考えている。 その他の方針として、本研究の目的の1つは被災者に対する具体的な支援策を提言することであった。その目的を果たす1つとして2021年3月に三宅島の子どもたちが夢や希望をもてることを願って「三宅島観光副読本:私が知りたい三宅島観光 みんなに知ってほしい三宅島観光」を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の研究経費の多くは、新型コロナウイルスの感染拡大の状況により、応募計画書で示した内容と変更を余儀なくされた。応募計画書では、本調査の方法として8月に三宅島を訪問し、研究代表者を含めた8名で個別調査法を実施する予定であった。しかし新型コロナウイルス感染の収束が見られない状況を考慮し、個別調査法を断念し、郵送調査法を実施したため研究費の大半を郵送調査の実施に使用した。その結果、本年度の研究費は次年度に繰り越している状況である。繰り越し金については3月に実施する三宅島での調査(個別調査法によるアンケートの配布・回収)に使用することを検討している。
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