研究課題/領域番号 |
19K03214
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
八木 善彦 立正大学, 心理学部, 教授 (80375485)
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研究分担者 |
井上 和哉 東京都立大学, 人文科学研究科, 准教授 (50631967)
笠置 遊 立正大学, 心理学部, 准教授 (30632616)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 真実性効果 / 流暢性効果 / 広告 |
研究実績の概要 |
人は同じ文を繰り返し読むと,次第にその内容を真実と評定するようになる(真実性効果)。この現象は,文の内容やその客観的な真偽とは無関係に生じることから,政治や広告など,幅広い分野から注目を集めてきた。本研究では,1)実験協力者に文を繰り返し能動的に読むことを求めずとも真実性効果を生じさせる実験パラダイムを開発し,2)真実性効果を現実場面に応用可能とするための基礎的知見を蓄積することを目的とした。 3年目は,絵画的真実性効果に及ぼす妨害課題の影響を検討した。実験は2段階で構成された。はじめの観察段階において,参加者は,ランダムに選ばれた3ケタの数値を提示された後,文または絵画刺激10種類を一画面に1種ずつ,100または200ms間提示された。各参加者はこれを3〜5回繰り返した。参加者の課題は数値を声にだして繰り返しながら(数唱妨害課題),画面を観察することであった。文刺激は,対象Aと対象Bの特定の事象に関する大小関係を表現した内容(例えば,「イヌはネコよりも左利きの割合が多い」)であり,絵画刺激は対象Aと対象Bの大小関係のみを絵画的に表した画像(例えば,イヌの画像とネコの画像の中間に,イヌがネコよりも大きいことを表す不等号を配置した画像)であった。続く真実性評定段階において参加者は,先行提示した文または絵画と適合的な文(例えば,「イヌはネコよりも左利きの割合が多い」),不適合的な文(例えば,「イヌはネコよりも左利きの割合が少ない」),あるいは,評定段階で初めて提示される新奇文(例えば,「カブトムシはクワガタよりも推定推測数が多い」)について,真実だと感じる程度を評定するよう求められた。実験の結果,文刺激条件においては,適合文と不適合文の真実性評定に差は認められない一方で,絵画刺激条件においては,適合文の真実性評定が不適合文のそれを有意に上回ることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までの成果に基づき,本年度はオンライン実験によるデータ収集および既存の説明モデルに関するレビュー論文の執筆を継続した。レビュー論文においては,真実性効果および関連現象(e.g., 単純接触効果,誤有名性効果)を統一的に説明することを目的として提唱された説明モデル8種類を紹介し,これらのモデルと,200以上の実証研究から得られた知見の整合性に基づき,モデルの妥当性に関する議論を行った(現在投稿中)。 オンライン実験においては,上述の様に,文刺激と絵画刺激による真実性効果に及ぼす数唱妨害課題の影響を検討した。実験の結果,文刺激条件では数唱妨害課題によって,適合条件(真実性評定すべき文と同一の文を事前に接触)と不適合条件(真実性評定すべき文と反対の意味を持つ文を事前に接触)の差は消失することが確認された。一方,絵画刺激条件では,数唱妨害課題を課された状況においても,適合条件(真実性評定すべき文と同じ大小関係を表す絵画刺激に事前に接触)と不適合条件(真実性評定すべき文と反対の大小関係を表す絵画刺激に事前に接触)の間の真実性評定値差は有意なままであった。昨年度までの成果(絵画刺激による真実性効果は,200ms程度の短時間提示,また1度の事前接触によっても頑健に生じる)と合わせて考慮すれば,絵画刺激による真実性効果は,文刺激による真実性効果と比べて,少量であるものの,短い時間や少ない提示回数で生起し,妨害の影響を受けにくい性質を持つことが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに,実証的アプローチについては予定の行動実験(オンライン)を概ね完了し,理論的アプローチについてもレビュー論文の投稿という形でまとめられた。最終年度は,オンラインによる行動実験を精査し,再現性を確認するとともに,投稿論文としてまとめる方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受け,実施を予定していた対面型の行動実験の中止を余儀なくされた。また,同じ理由により,当初予定していた英国バーミンガム大学での研究についても中止となった。これらの影響から,本助成研究は,当初予定期間(3年)を一年延長することとした。このため,最終年度の研究活動費(主に実験協力者への謝礼と成果報告書等印刷費)として,次年度使用額を確保した。
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