研究課題/領域番号 |
19K03223
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中道 圭人 千葉大学, 教育学部, 准教授 (70454303)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼児 / 思考 / 実行機能 / 心の理論 / 縦断研究 / 認知発達 |
研究実績の概要 |
本研究では,幼児期における様々な思考(メンタル・タイムトラベル,心の理論,等)の発達や,その思考を支えている基盤的能力(実行機能,社会情動的能力)の発達を検討するものである。 令和3年度は,大きく3つの研究を進めた。第一に,幼稚園・保育所に通う4~6歳児113名を対象に,観察した事象から一定の法則を見出し,その法則を用いて将来の予測をなすかを検討するための実験を行った。実験ではまず,木や石がある公園Aの模型を提示し,実験者が幼児と一緒に「公園Aのどこに虫aがいるか」を探した。その後,同じような公園Bの模型を提示し,幼児に「公園Bでは,虫aがどこにいるか(虫の居場所に関する法則)」を尋ねた。最後に,公園Bでも虫aを探した後,幼児に「虫aはどのような場所が好きか(虫の居場所に関する法則)」を尋ねた。その結果,幼児が事象の生起確率に注目して一定の法則を見出すこと,さらには新たな事象を予測するためにその法則を用いること等が明らかになった。この成果の一部を,学会にて発表した。 第二に,幼児期の思考やその基盤となる実行機能・社会情動的能力に関わる取得済みのデータの再分析・再解釈等を行い,それらの成果の一部を学術論文や書籍の章として公刊した。 第三に,幼児期の思考やその基盤的能力の発達が就学以降の学業的な発達とどう関連するかを検討するための縦断的な調査を行った。分析の結果,幼稚園年長時点の実行機能は小学校1年生時点の学業達成を強く予測すること,また幼稚園年長時点の心の理論の能力は小学校1~5年生の学業達成の影響を統制した場合でさえ,小学校卒業時点の学業達成を予測すること等が示された。この成果の一部を学会の研究発表や学術論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度も新型コロナウィルス感染症の影響により,当初に予定したスケジュールでの研究実施は困難な状況であった。そのため,昨年度と同様に研究計画の調整を行い,まずは児童を対象とした縦断的な研究を継続した。また,新たに「子ども研究制度」を立上げ,保護者と幼児に大学に来校してもらうことにより,実験の一部を実施することが可能となった。そのため,調整した研究計画については,概ね計画通りに遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,児童を対象とした縦断的な研究のデータをさらに精緻に分析して,学会発表や学術論文としてまとめ,公表すると共に,新型コロナウィルス感染症の状況を踏まえながら,幼児を対象とした対面での実験を継続して実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度では,参加予定であった学会等がオンライン開催となった。このため,旅費等の余剰が生じた。また,研究計画を調整し,対面での実験に関わる物品費・人件費等の使用を延期したため,予算の余剰が生じた。本予算は,翌年度の研究のための物品費・旅費等として使用する予定である。
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