本研究では,幼児期における様々な思考(メンタルタイムトラベル・心の理論,等)の発達やその思考を支えている基盤的能力(実行機能,社会情動的能力)の発達を検討するものである。 令和5年度では,主にこれまでの研究成果をまとめ,学術雑誌・学会にて発表した。第一に,幼児期の思考やその基盤的能力の発達が小学校卒業時点(6年生)の学業達成とどのように関連するかを検討した。その結果,幼稚園年長時点の実行機能が小学校1年生時点の学業達成を強く予測すること,また小学校1・3年生時点の学業達成を制御した場合でさえ,幼稚園年長時点の実行機能は小学校6年生時点の学業達成に間接的に影響することが示された。 第二に,幼稚園・保育所に通う4-6歳児89名を対象とし,他者の過去の行動(確率的な行動)や属性(性別)を考慮して,幼児がその他者の行動を予測するかどうかを検討した。その結果,他者の「確率的な行動」と「属性」に基づいて,幼児がその他者の行動予測をしていることが示された。 第三に,児童85名を対象に,実行機能・心の理論と国語の学業達成の関連について検討した。その結果,小学校1・3年生時点の実行機能・心の理論能力が同時点の国語の学業達成に影響すること,また,「1年生時点の国語の学業達成が3年生時点の実行機能に影響し,3年生時点の実行機能が5年生時点の国語の学業達成に影響する」という発達の相互的な影響が示された。 これらの成果の一部を,学術雑誌・学会にて発表した。
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