研究課題/領域番号 |
19K03224
|
研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
奥村 太一 滋賀大学, データサイエンス学部, 准教授 (90547035)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 一般化可能性理論 |
研究実績の概要 |
本年度は、多重ベースラインデザイン等によって得られた経時的データから測定・評価の信頼性を検証する場面に注目して検証を行なった。Cranford et al. (2006) や Shrout & Lane (2012) によって提案されているマルチレベル信頼性係数は、R の psych パッケージにも実装されており、縦断データへの利用が見られるようになっている。Brennan (2001) の一般化可能性理論に基づいて導出される信頼性係数(一般化可能性係数 Eρ2 及び信頼性指数Φ)とマルチレベル信頼性係数 R_KR を比較したところ、項目×ヒト×時点のクロスデザイン(ただし項目は固定ファセット)では Φ<R_KR< Eρ2 であり、項目×(時点:ヒト)の部分的入れ子デザインでは Φ, Eρ2 < R_KR であった。これは、R_KR ではいわゆる誤差成分に項目×時点の分散を含めていないためである。マルチレベル信頼性係数の導出においては、ヒトが関わる要因以外(この場合は項目、時点、項目×時点の3つ)は固定とされているが、一般化可能性理論においては2ファセットデザインのファセットを2つとも固定にすることは想定されていないため、R_KR については一般化可能性理論の文脈から再度位置付けを考え直す必要があるだろう。 実データへの適用として、職業性ストレス簡易調査票の経時データから一般化可能性係数と信頼性指数のベイズ推定を行い、その信用区間を検証した。このデータは合計48名分、合計で419回分の回答からなる。3つの尺度いずれについても信用区間の半幅はおよそ0.15を下回るレベルであったが、0.8や0.9といった基準値と比較することを考えると若干広めであった。信頼性検証に必要な標本サイズとしては、これよりも大きい規模が必要とされることを示唆する結果である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
元々処置効果の推定精度を標本サイズ決定の基準としていたが、信頼性検証も経時データ分析の重要なテーマであることに気づき、関連する先行研究の整理に時間を取られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
信頼性検証は当初の計画にはなかったテーマであるが、こちらで一定の成果が見出せそうなこともあり、処置効果の推定と合わせて検証の対象としたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
学会や研究会がオンライン開催となったため旅費が不要とな利、それに代わって、オンライン会議に参加するための物品費が必要になったことによる。 次年度も感染拡大の状況に鑑みて適切に執行を行う。
|