研究実績の概要 |
クリティカルシンキング(以下CTと略記)の意義や効用は多くの場所で語られるにもかかわらず、その能力を高めることや高めるための努力を自ら継続することが容易ではないと考えらえる。筆者は、CTの能力そのものよりもその獲得のための動機づけに着目し、それを高める個人差要因があるのかについて検討を行った。まず獲得のための動機づけを高めないと能力を高める継続的な努力はおこなえないと考えたからである。 そこで着目したのが、非認知的能力という個人差要因である。自らを律し、継続的に努力をおこなうこと、獲得に向けて挑戦していくことなどに関して深い関連があると指摘されるようになり、子どもの学習においても幅広い影響があるということが見いだされてきている。 最終年度は、短縮版社会的CT志向性尺度(磯和・南, 2015)と短縮版論理的CT志向性尺度を用いて、他者との協働のスキル、情動の制御のスキルがどのように関連するのかについて検討を行った。結果は、これらのスキルの効果が関連する因子が多く見られたが、すべてにおいて関連するわけでもなく、また単調に関連するとは限らないことが示された。このことから、非認知的能力を万能の能力として語ることはできないことが考えられる。 また、過年度には、非認知的能力のうちとくに目標の達成に関するスキルに着目し、社会的CT志向性尺度(南, 2019)と論理的CT志向性尺度(南, 2020)にそれぞれ一定の関連があることが見いだされている。
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