研究課題/領域番号 |
19K03228
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
若松 養亮 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50273389)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 進路意思決定 / 大学生 / 就職活動 / 職業の意義 |
研究実績の概要 |
2020年度は、12月に3年次生を対象として質問紙調査を行い、201名の回答を得た。前年度からの懸案であった「楽しく働く」の測定については、教示文を「就職した先であなたが『ストレスなく楽しく働いていく』ことと、どの程度関係するでしょうか。」と変更したが、やはりいずれの項目も高い評定に偏る結果となった。因子分析による項目の類型化を行うと、「1.自分の成長や快」、「2.他者とのつながり」、「3.仕事外への視点」という、言わば「対自己」「対他者」「対余暇」という理論に沿った分かれ方にはなったが、反面、「楽しく働くこと」の各論的な分析には向かないものとなった。 この量的調査で他に見た変数との関連は、以下の通りである。まず進路選択そのものに高い自我関与で取り組もうとする人ほど、上記の対自己・対他者の含意を強く求めていた。また就業動機の類型別に見ると、内発的または自律的な動機を強くもつ人ほど、上記2種の含意を強く求めていた。能力的な側面として教師効力感の指標との関連も見たが、「対・子ども」の効力感と対自己の含意にごく弱い相関が見られたに留まった。 「楽しく働くこと」の含意を調査用紙によって各論的な部分まで測定しにくいという課題に対して、年度の後半になって3~4年次生への面接調査と、過去の同学年次生への面接記録の掘り起こしから、彼らの職業の選好が依拠する価値がどのようなものであるかの洗い出しを行った。キーワードで列挙すると他者に対する「影響・主導・効力感」、他者との「関係性」、進路先の状態への「見通し」とそれが深まっていく「掌握・世界の広がり」、他者に対する「課題解決・人助け」とそこに伴う「倫理」「創造性」、職場をともにするであろう人との「類似・同質性」、自身の能力や意欲の見積もりに伴う「本意性・裁量性」「キャパシティ」「能力・適性」といったカテゴリに集約された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「楽しく働く」ことの含意を量的測定ができる尺度化しようと試みているが、評定の高止まりに起因する因子分析結果が、各論を的確に捉えていないものとなっており、その尺度を用いて行う予定であったその後の研究がうまく進められていない。また学会の大会がすべてオンライン開催になったことから、通常であれば同領域や近接領域の研究者から情報収集やアイディアを得る計画が進められなくなっている。 20年度末からは、「楽しく働く」という表現にこだわらずにその含意を改めて検討するため、新たな面接調査およびこれまでの面接調査の記録に立ち返って、彼らの職業の選好が依拠する価値がどのようなものであるかの洗い出しを行っている。
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今後の研究の推進方策 |
進捗の遅れに対して、20年度後半から、対象者が依拠する選好の価値判断全体にもう一度立ち返って、そこで重視されている基準から、この研究で焦点を当てる価値観・含意を見直そうと取り組んでいるところである。次年度は最終年度となるが、21年度前半にその作業を終えて、年度の後半から申請時に計画した部分を進めていく予定である。 なお、3年計画の2年間において国内および国際学会の出張旅費や参加費を支出しない分、1年間の計画延長を申し出る予定でいる。すなわち、あと2年間で予定した研究を完了させる計画への変更を含めて、現在、研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために学会大会の開催がすべてオンラインとなったことから、出張旅費がかからなかったことが一番の理由である。その他には、質問紙による調査時期が予定より遅れたために、その結果を受けての面接調査が年度を跨いだことも理由である。
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