研究課題/領域番号 |
19K03228
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
若松 養亮 滋賀大学, 教育学系, 教授 (50273389)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 大学生 / 職業選択 / キャリア / 勤労観・職業観 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代の若者世代の特徴とされる「楽しく働きたい」という欲求・価値観に着目し、はじめの2年間、自由記述のデータから量的測定の尺度を作成することに試行錯誤していたが、2021年度末に実施した調査において、筆頭に希望する職業を良いと思った理由で評定させたことで、因子的妥当性と内容的妥当性をもった尺度が完成させることができた。全6因子のうち4つが仕事の内容と関わる因子であり、それらが「楽しく働きたい」という欲求と正の相関を示したことから、「楽しく働く」ことの含意は、まずは仕事内容と関わるもののなかから究明していく必要があることを明らかにできた。 2022年は21年度末の量的データをさらに分析し、キャリア選択の真剣さや大学時代における意思決定の停滞と関連する因子や、教育実習前の教職志望度、そしてそれを統制した場合の実習後の教職志望度を予測する因子を明らかにした。さらに年度末の2~3月においては、その分析結果の解釈のエビデンスを得るために、教職に就く学生8名、教職以外に就く学生7名に面接調査を実施した。これらの結果は、学会誌への投稿論文として夏までにまとめる予定でいる。 現在は、これまで明らかにできた知見を理論の中に組み込むために、動機づけを初めとした心理学の諸理論との接続とそこからの発展の方向を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前項に述べたように、量的測定の尺度は一通りのものが完成できたが、質問項目のなかに、尺度内における項目の配列順序に評定が影響を受けたと見られる、因子名には充分に合っていないものが散見されたり、内的整合性が.7台の因子が3つ見られるなど、ロバストな尺度とは言い難い部分が見られる。本年度の研究では質問項目の内容・表記と配列順序を改善したものをもとに、再度実施する。 またこの尺度は、研究主題である「楽しく働く」含意に限らず、その含意として自由記述で集められた内容を中心とした、彼らを職業選択に動機づけるもの全体をカバーする内容である。2019年・20年の試行錯誤から、調査協力者に直接「楽しく働く」含意を評定させることが困難(評定が高止まりし、彼らが平素感じている含意を弁別的に測定できない)ことがわかったことから、そのような軌道修正を行った。それだけに、それら(のうち部分的なもの)が「楽しく働く」含意と位置づけられる濃淡やその構造を整理することは重要な課題であるが、それを終えられていない。 さらに当初の計画では、その含意と進路選択行動との関連、実習等の経験による変化、そして個人差の要因を明らかにすることが挙げられていた。それぞれ21年度末の調査で部分的には明らかになったが、充分とは言えない。たとえば実習等の経験による変化については、教育実習についてのみ、しかも含意自体の変化についてはまだ解明されていない。その他についても、明瞭とは言えない差が見出されており、適切な個人差変数や状況の変数を含めて、その差をより精緻に記述する課題があると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず21年度に作成した職業選択理由尺度を改訂し、因子的妥当性および内的整合性がより高い尺度へと精緻化したい。そのうえで「楽しく働く」含意が職業選択の理由全体のなかでどのような布置にあるかを明瞭に位置づける分析を行いたい。具体的には、「楽しく」を「(その職業で)働くことへの動機づけが高いこと」と読み替えて、その動機づけの高さと職業選択理由の各要素と相関する程度を手がかりとする。 続いて改訂された選択理由の各要素が、意思決定の進み・遅れや進路選択行動、時間経過によってどのように関連し、また変化するかを最終的に明らかにし、研究の終結としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の蔓延のため、発表や情報収集に出向く国内学会がすべてオンライン開催となったため。
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