研究課題
共感性は,人間においても他の動物種においても向社会行動の基盤である。向社会的な人間は,ストレス経験が少なく,寿命が長いという報告もあるため,向社会行動への誘因たる共感性の発達基盤について実証的な検証を行うことは社会的な意義が大きい。共感性は,人間の適応行動に欠かすことのできないヒューマン・キャピタルのひとつでありながら,幼児期・児童期における共感性の構造と結果変数に対する予測的妥当性については未解明の部分が多い。そこで,本研究課題では,幼児期・児童期の共感性の構造と発達の動態を明らかにしながら,それらが社会的な適応と不適応にどのように影響を与えるのかを双生児法を用いた行動遺伝学解析による検証を行っていくものである。本年度に限定して述べれば,コロナ禍のため,当初想定していたまでに十分なだけの進捗を得ることはできなかったが,これまでに取得したデータに基づいて分析を進め,国際論文誌1編,国内論文誌1編,国際学会発表2件(うち,招待講演1件),国内学会発表1件の研究報告を行った。例えば,国際学会の招待講演においては,認知的共感と情動的共感がそれぞれASDとサイコパシー傾向のどのように関連するのか,それらの遺伝・環境構造について多変量遺伝解析を行い,認知的共感とASDの遺伝相関と並びに情動的共感とサイコパシー傾向の遺伝相関は相対的に高いことを報告し,現在英文誌に投稿中であるが,いまだ採録決定には至っていない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
心理学研究
巻: 93 ページ: 51-57
10.4992/jjpsy.93.20333
Journal of Affective Disorders
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