研究実績の概要 |
研究目的:昨年度は、集団討論における参加者の視線配布の同期性を予想していたが、これを裏付ける結果は得られなかった。今年度は、より短いインターバルにより視線配布のコード化を行い、改めて同期性を測定した。 研究方法:感染症予防の観点から対面授業が実施困難になり、今年度新たな集団討論データを収集することが困難であったため、前年度試験的に収集された集団討論録画を分析対象とした。参加者は大学生6名、討論はLTD(Learning Through Discussion, 方式とし、時間は約1時間であった。遠隔作業により、1/16秒をインターバルとし視線配布のコード化を行った。各発言の内容についても、議論の進展に影響を及ぼしたもの(キー発言)を同定した。コーディングソフトには、ELAN (Ver 5.9, Max Planck Institute for Psycholinguistics) およびCAPTIV-L2100 (Ver 2.3.42, Creact) を用いた。ネットワーク分析では、発言の抽出を意味単位とし、発話元から発話先への発言をリンクとみなし次数中心性を求め、議論の質の指標とした。 研究結果と考察:参加者毎に、発話者への視線配布の有無をコード化し、各インターバルでの視線配布の人数を算出した。参加者全員の視線配布があった直後のキー発言の有無に差があるか検定したが、有意な結果は得られなかった。一方で、各ステップのキー発言の頻度と字数中心性の平均を求め相関を検討した。その結果、傾向ではあるが、キー発言が多い方が次数中心性が低いことが示唆された。つまり、討論の中で議論を刺激する発言が生じた際には、参加者全体が活性化され、発言数が等しく増える可能性がある。これは集団討論の実践と合致する結果であり、発言の円滑な交替が議論を決定づける要因として推測される。
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