自閉スペクトラムがある人の会話と対人関係の特性とその発達過程

2020 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K03236
• 研究機関: 白鴎大学
• 研究代表者: 浅田 晃佑 白鴎大学, 教育学部, 准教授 (90711705)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: 自閉スペクトラム症 / コミュニケーション / 対人関係

研究実績の概要

本年度は、自閉スペクトラム症児者と定型発達児者を対象に、ユーモアの志向性と笑いの日常体験について調査した。ユーモア・笑いは日常生活の心理的健康に関係しており重要な役割がある。また、どのようなことにユーモア・笑いを感じるかはコミュニケーション特性に関係し、それを検討することで自閉スペクトラム症児者の特徴を明らかにできると考えた。新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、研究計画の変更を余儀なくされ、当初計画していた対面での心理実験はできず、オンライン調査に方法を変更して行った。
中学生から成人の参加者を対象に、日常で笑う頻度、そして、どのようなユーモアをよく行うかをオンラインアンケートにより検討した。自身が笑う頻度について自己評価してもらった結果、自閉スペクトラム症児者と定型発達児者で有意な差は見られなかった。どのようなユーモアをよく行うかに関しては、日常で、①親和的ユーモア（冗談などを言って、周りを笑わせるユーモア）、②自己高揚的ユーモア（ストレスや困難に直面しても面白おかしくとらえ、自分を支えるユーモア）、③攻撃的ユーモア（からかいで、他者を批判するユーモア）、④自虐的ユーモア（他者に受け入れてもらうため、自分を過剰に低めるユーモア）のどれをよく行うかを調査した。その結果、親和的ユーモアと自虐的ユーモアで定型発達児者が自閉スペクトラム症児者よりも数値が有意に高く、自己高揚的ユーモアと攻撃的ユーモアにおいては群間の差は有意ではなかった。今後は年齢による変化の検討など、さらに分析を加え、論文にまとめていく予定である。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、当初計画していた対面での心理実験からオンライン調査への変更が必要になった。参加者に子どもが含まれることから困難が予想されたが、参加者のご協力もあり、想定よりスムーズに移行できたことは評価できる。しかし、当初計画からの変更があったことや学会発表を見送ったことから、やや遅れていると評価した。

今後の研究の推進方策

今後の研究も計画を変更し、対面での心理実験はオンライン調査に変更して行う。ただし、オンライン調査では、対面での丁寧な説明などをすることが難しいことから、調査が可能な参加者の年齢検討や分かりやすい明確な調査方法の検討が必要である。また、研究成果の発表も対面による方法は制限されることから、論文による発表を重視して行いたいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症の流行の影響により、計画に変更が生じたためである。研究計画をオンラインに変更したこととオンライン調査を共同研究により実施したため、かかる費用が予想より少なかった。また、予定されていた出張がなくなった。使用計画としては、研究成果は蓄積されていることから、論文の英文校閲など論文出版関連に今後費用がかかる見込みである。