研究課題
第一に,発達障害傾向のある園児に対して検査や行動観察を行い,それによる見立てを幼稚園の園長や教諭,そして保護者にフィードバックを行った。その後,フィードバックの場面で得られた語りについて,KJ法を援用してまとめた。その結果,『支援者への肯定的評価』『検査中の行動観察』『専門的視点』『対話の機会』『幼稚園の方針の理解』『展開』という6つの大分類にまとめることができた。そこで,KJ法を援用してまとめられた分類をもとに,本研究で行ったようなアウトリーチ型協働支援が機能する要因について,仮説的なモデルを作成した。その結果,臨床心理士並びに医師の人柄や,こちらから出向くという積極性が,組織に好印象を与えていることが明らかとなった。そして,組織からの信頼を得ることにより,その組織を信頼する人々,今回の場合で言えば園児の保護者からの信頼を得ることにつながった。そして,検査自体がスムーズに行われ,また結果のフィードバックや保護者とのコミュニケーションが円滑になることが明らかとなった。以上の結果から,心理職ならびに医師の2名の専門家が,発達障害傾向がみられる園児をもつ親の会へ参加して,<専門的視点>を提供するという働きかけが,<専門家が参加する利点>を生じさせるために重要であることが示唆された。また,“間接的表現の使用”や“話題設定”は<保護者の悩み>が話しやすくなる等の影響を及ぼし,親の会の質を向上させる可能性が考えられた。今後,継続的に専門家が親の会へ参加し,会ごとのテーマ設定や間接的表現を用いることによって,どのような影響があるか検討していく必要が推察された。