研究課題/領域番号 |
19K03253
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
犬塚 美輪 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (50572880)
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研究分担者 |
田中 優子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30701495)
藤本 和則 近畿大学, 経営学部, 教授 (80424993)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | デジタルメディア / 誤情報 / 他者の意見 / 理解 / 態度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,デジタル時代のディスコースを題材として,その理解や思考に生じうる困難とその改善のための方策を提示することであった。デジタル時代のディスコースの特徴として,信頼性の不確実さ,マルチメディア提示,他者の意見の提示に注目し,フェイクニュースや偽科学を題材とした実験・調査と理論的検討を進めた。 最終年度は,これまでに実施した検討の成果を学術論文として発表した。 まず,フェイクニュースを題材に数理モデルを提案・発表した。提案したモデルを用いて,訂正情報を提示する効果と情報の正確性を考えさせる教示の効果を比較検討し,常に正確性を考えさせる教示を実施するのは効果が相対的に低い可能性を示した。 また,偽科学を題材とした動画において他者のコメントが及ぼす影響を,Elaboration Likelihood Modelを援用したモデルで説明した。提案したモデルでは,偽科学に対する態度や評価,受入れに,内容に無関連な印象(周辺ルート)と精緻化推論(中央ルート)の両者が関わっていることを示し,他者コメントの感情価が両ルートに影響する一方で,コメントの本質性は中央ルートにのみ影響することを示した。 さらに,テキストを題材とした実験では,コメントの本質性として反駁要素の有無を取り上げ,反駁要素(証拠への疑問や証拠と主張の結びつきの弱さの指摘)が偽科学に対する受容的態度を低下させることを示した。 教育実践の観点からは,具体例を用いて実践的になされる必要が有ると考えられたが,いくつかの事例の検討から,信頼性の不確実な内容を取り上げることへの抵抗が大きいことが示唆された。そこで,教員を対象とした調査を実施し,教員自身の信念や教育方針を尋ねた。現在実施した調査について分析を進めており,今後学術誌に投稿する予定である。
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