研究課題/領域番号 |
19K03256
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
平石 賢二 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (80228767)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 中年期の親 / 青年期の子ども / 親子間葛藤の解決プロセス / 相互信頼感 / 中年期の発達課題 |
研究実績の概要 |
2020年度は(1)文献研究と(2)面接調査研究の2つの研究を行った。 (1)文献研究としては,これまで主に発達心理学研究として位置づけられる親子間葛藤の研究をレビューしてきたが,2020年度では新たに臨床心理学的な事例論文を収集し,主に心理療法やカウンセリングのプロセスにおいて焦点化され,明確になった親子間葛藤と子どもの問題行動との関連,その解決プロセス,およびその背景にある親の心理的な課題に関する整理を試みた。その結果,多くの論文において,親自身の乳幼児期から児童期までの未解決課題である,見捨てられ不安,分離不安,分離-個体化の課題,自己愛の傷つき,病理的パーソナリティなどが思春期,青年期の子どもとの親子関係に悪影響を及ぼす背景要因にあり,そのことが子どもの問題行動と関連していると示唆していることが明らかにされた。 (2)面接調査に関しては,青年期の子どもの子育てを経験したことがある母親9名(平均年齢55.1歳)を対象にして回想法による半構造化面接を実施した。面接では青年期にある子どもとの親子間葛藤のエピソード,特に怒りの感情に焦点をあてた感情制御のプロセス,葛藤解決のあり方などについて質問した。また,面接調査によって得られた語りのデータの分析に際しては,複線径路・等至性モデルを用いて分析を行った。結果として,青年期の子どもとの親子間葛藤解決に至るプロセスには怒りの感情を制御する方略(抑制,一方的表出,視点転換の試み,建設的表出)の観点から4つの異なる類型があることが見出された。また,特に葛藤解決の過程においては,子どもに対する受容・自律性の保障が重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルス感染拡大により,対面による面接調査の実施に大きな制約があった。また,コロナ渦において本務の負担も増加していたため,本研究課題に費やすことのできるエフォート率が十分ではなかったことも一因である。
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今後の研究の推進方策 |
まず第一に研究期間の延長を検討する。また,今後も面接調査実施に関しては大きな制約がある可能性を考慮し,自由記述形式の質問紙調査をオンラインで実施するなどの代替措置を並行して行う計画を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に実施する予定であった面接調査が十分に行えなかったため,研究協力謝金およびデータ整理のためのアルバイト代の支出が少なかった。2021年度においては,新型コロナウィルス感染状況を考慮しつつ,面接調査またはその大体措置としてのオンラインによる自由記述型の質問紙調査を実施する予定であり,そのための経費とそこで収集したデータ整理のためのアルバイト代に充てる。
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